「藤真さんと牧さんに、ガードに付かれてから、ちゃんの得点が減りましたね。」 晴子の言葉に彩子が頷く。 「止まってないだけ凄いんじゃない?」 残り5分で、点差を9点のみ。 神奈川ベスト5相手に、大健闘である。 Bチームが伸び伸びと動いている。 のパスが上手い。 「…自ら切り込めて、中からも外からも行ける… ゲームの流れを読んで、パスもさばける。」 牧がちらっと藤真を見た。 「少し強引な所が、お前にそっくりだ。」 細く笑った牧に、藤真は首を竦めた。 「感心してる場合じゃないぞ。 神奈川の帝王が一人の女の子に負けたなんて事になったら、全国2位が聞いて呆れるぜ。」 「お前こそ。 神奈川の双璧があの子に勝てないって事になると、冬の選抜が危ういな。」 ライバル意識剥き出しである。 「二人とも〜、いいんですけどねぇ… 来ますよ?」 仙道と神が苦笑う。 「…止める。」 流川が呟いた。 Aチームの激しい攻防。 その中で、Bチームは確実に点を上げて行った。 残り時間が20秒を切った。 「〜っ! 決めれば同点よ〜!」 彩子が叫んだ。 丁度がパスを貰った時だった。 「行かせないぞ。」 「あ、牧さん、気を付けて下さい! 小さいから…」 仙道の言葉が完全に終わるより、早かった。 牧をかわして、ゴールに向かう。 「来い!」 行く手を阻んだ藤真に、はにっこりと笑った。 「抜きます。」 低いドリブルから、抜くタイミングを計る。 藤真はぴったりマークしていた。 伊達に、一年、一緒にバスケをやっていただけはある。 のオフェンスに対して、ディフェンスの隙がなかった。 「ちゃん〜! パァ〜ス!!」 ゴールの直ぐ下で、清田が手を振っている。 が一瞬清田を見た。 パス。――― 誰もがそう思った。 「甘い! そのフェイクのパターンは知ってる!」 藤真は惑わされない。 ボールを奪おうと手を伸ばす。 はボールを体の方に引き寄せた。 右手から左手に移して、そのまま後ろへノールックパス。 「…っ。」 ボールは三井に渡った。 「はい!」 藤真が唖然としている間に、は走り出していた。 三井はそのままに、ストレートパス。 ボールを受け取ったが、シュートのため跳ぶ。 「って、えぇ !?」 思わぬ障害に気付くが、既に遅い。 「のわ〜!!!」 桜木は咄嗟に避けた。 「…!」 桜木とゴール下で何やら争っていた、流川と接触。 ウエイトの差で、が吹っ飛ばされる。 「っ!」 声にしたのは彩子だけだったが、誰もが叫んだ。 の華奢な小さな体が、宙に舞う。 敵味方関係なく、皆がに駆け寄った。 はそれでもゴールを見つめていた。 不安定な体勢から、ボールを放る。 ボールは真っ直ぐにゴールに吸い込まれていた。 「きゃぁっ!」 頭からコートに落ちそうになったが、衝撃がない事には首を傾げた。 大きな手に受け止められたらしい。 「せ、仙道さん… /// 」 しっかり抱きとめられていて、は赤くなった。 「…大丈夫?」 にっこり笑った仙道に頷くより早く、は別の人物に抱き上げられた。 「宗ちゃん。」 を立たせて、にっこり微笑む。 「どこかぶつけなかった?」 神の問いに、コクンと頷く。 「流川、気を付けろ! 今頭から落ちてたぞ!」 清田がギャーギャー喚いている。 は俯いて、ぎゅっとシャツの胸元を握った。 ぽん。――― 優しく頭を撫でられて顔を上げると、藤真が微笑んでいた。 「…大丈夫だ。」 が胸元から手を放したのを見て、藤真はほっと息を吐いた。 「フリースローだ。 打てるな?」 は頷いて、フリースローラインに立った。 数回床でボールを跳ねさせて、息を整える。 先程のシュートが入り、同点。 残り時間は4秒。 が決めれば、勝ちである。 (大丈夫だから。) まっすぐにゴールを見つめて、ボールを放とうとした瞬間。 リバウンドのため脇に控えていた仙道が、自分の手のひらを見つめて呟いた。 「………70のB。」 がごん。――― ボールはゴールにぶつかって落ちた。 「せ、せせせ… 仙道さんっ! ///// 」 は真っ赤になって訴えた。 「え? だって、さっき受け止めた時にほら、ね?」 仙道はと言うと、その場にいた全員の、氷のような冷たい視線にただ苦笑っていた。 結局。 延長戦になり、足の調子を理由での抜けたBチームは、13点差でAチームに敗れた。 |