激戦の後半



スパッ。―――

 体育館は奇妙なほどに静かだった。

 後半開始から、約5分。

 スコアは 45 − 31 。

 の加わったBチームが、驚くほどの追い上げを見せていた。

ちゃん、ナイッシュ!」

 清田が嬉しそうにと手を合わせた。

 ブロックに来た流川・仙道を、ダブルクラッチで決めたシュート、嬉しくない筈がない。

「あ〜!!!」

 大声で叫んだ桜木、彩子にうるさいと怒鳴られた。

 Aチームはタイムを取った。

「…なかなか手強いな、お前の幼なじみは。」

 牧が神に苦笑う。

「前半で、見抜かれちゃったみたいですね。 俺達の弱点を。」

 神が首を竦めた。

「急に決まったチームだ。 弱点があってもおかしくはないさ。」

 藤真が大きく息を吐いた。

「………俺に、任せてくれるか?」

 すっと、に視線を送る。

「構わないが、勢いを止められるんだろうな?」

 牧が細く笑った。

 自分とマッチアップしている時以外で、藤真が楽しそうなのを初めて見た。

に、技術を叩き込んだのは俺だ。 弱点くらい知っているさ。」

 リストバンドで汗を拭う。

「ボールを回すぞ、3Pを狙え。」

 神が頷いた。

「牧は、俺のヘルプにも気を回してくれ。 ゴール下のブロックは、そのまま流川と仙道に任せる。」

 のプレイで、Bチームが勢いに乗って来た。

 を止めなければ、負けかねない。

ぽん。

 突然肩に手を置かれて、藤真が振り向いた。

 流川が、不機嫌そうに立っていた。

「…俺がやる。」

 どうやらの事を言っているらしい。

「前に 1 on 1 で手を抜かれた。 むかついたから、今度は全力で戦って勝つ。」

 頑として譲らない流川に、藤真は溜息を吐いた。

「わかった、俺がヘルプに付く。」

 タイムが終了して、試合は再開された。

 身長差を生かして、まずは流川が点を入れた。

 のプレイで火が点いたのか、粘り強いディフェンスでへのパスが通らない。

「むぅ…」

 が頬を膨らませた。

「流川君、まだ根に持ってる?」

 流川は答えず、試合に専念していた。

「…来て見ろよ、どあほう。」

 流川の一発で、Aチームが本来の型に戻った。

 藤真が切り込み、仙道へパスを通す。

 シュートを狙えない場合には、牧へパスを出し、神にまで戻す。

 流川がを押さえて、藤真のパスが冴えて来た。

 Bチームは粘るが、特別な決め手を失い、追い付いて来た得点がまた離され始めた。

 57 − 35 。

 ここでBチームがタイムを取った。

「ふぅ…」

 は汗を拭って、ストップウォッチを見た。

 残り時間は、 9 分 38 秒。

「桜木君、出番よ。 リバウンドは任せたから。」

 の声に桜木が大きく答えた。

「任せて下さい!」

 がほかのメンバーを見つめる。

「三井先輩は3Pライン付近に、越野さんはミドルレンジに、清田君は… ゴールに向かって、だっしゅ。」

 に指示を出された3人は、顔を見合わせて首を傾げた。

 の言葉は、つまり。―――

「ボール運びを、一人で…?」

 清田がを見つめた。

 頷いたに越野が首を振る。

「無茶だ、流川のあのディフェンス…交わせるわけない。」

 不安気に沈んだメンバーに、彩子が言った。

なら、大丈夫よ。」

 タイム終了。

 一息吐いて、コートに入る。

「…彩子さん………」

 晴子が不安気に彩子を見つめた。

「いいから、見てなさい。 奇跡が、再び起こるかもしれないんだから。」

 プレゼント・ザ・ゲーム。

 の実力を、この程度となど、彩子は思っていなかった。



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