意地っ張り



部活終了直後。

 それまで一言も口を利いていなかった二人に変化が。

 三井が、の元へ歩み寄って行った。

 は驚いたように、ただ首を傾げて、わずかに怯えていた。

 三井は大きく息を吸い込んで、口を利いた。

「モロゾフ! 奢ってやるから行くぞ!!」

 いきなり何なんだ。

 周りの微妙な反応を気にも止めず、三井は真っ直ぐにを見据えていた。

 一瞬驚いたように目をぱちくりさせて、はにっこり笑った。

「はい! ゴチになります!」

「あ、…」

 エリオルが声をかけたのにも気付かない様子で、は嬉しそうに三井に駆け寄った。

 子犬のように懐っこいに微笑みかける三井を見て、エリオルは溜息を吐いた。

「全く、意地っ張りなんだから。」

 誰に言うでもなく、彩子が呟いた。



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