「Thanks pretty girl!」 小さくウィンクして、マイケルは校門を見上げた。 海南大付属高校。――― 手振り身振りで道を聞き出し、少し迷いながらも目的地へ到着する事が出来た。 下校中の学生達が珍しそうにマイケルを見上げるが、そんなのお構いなしだ。 マイケルは校門をくぐった。 「Hey!」 校内で一人の男子生徒に声をかける。 「Where is gym?」 「は?」 マイケルの問いに、男子生徒は大きく首を傾げた。 何故通じないんだと罵りたい反面、マイケルは今度は日本語で同じ問いを投げた。 「…体育館は…どこ、だ?」 男子生徒はマイケルを睨むように見上げる。 「外人が体育館に何の用だよ?」 一気に捲くし立てられて、マイケルは言葉に詰まった。 「ダメダメ。 今日、翔陽と練習試合があるんだから、部外者はお断り…」 「ショウヨウ! Yes!」 「な、何だよ…?」 男子生徒は気味の悪そうに眉を顰めた。 「Do you know ケンジ・フジマ?」 「? 藤真さん?? 藤真さんがどうかしたのか?」 男子生徒が驚いたように続ける。 「何だ、あの人… アメリカにまで名前が知られてんのか !?」 突然頭を抱えだした男子生徒に、マイケルは一歩後退った。 「こんにゃろ〜! ちくしょう、俺の名前も覚えとけ!!」 そう言って大きなスポーツバッグを漁る。 中から取り出したのは、10番のユニフォーム。 「海南大付属高校・一年10組、清田信長!! 二年後には、全国制覇だ!!」 ゴンッ。――― 痛そうな音がした。 「何をやっている? 早く体育館に行け。」 「殴る事ないじゃないですか、牧さん。」 しぶしぶ体育館に向かう清田に溜息を吐いて、牧は振り返った。 (でかいな…) 『家の一年に、何か用か?』 『アンタは、英語が話せるんだな。 安心したぜ。』 マイクは細く笑った。 『あの坊主に用があったんじゃねえよ。 神って奴と、あと藤真に用があるんでな。』 不審そうに眉を顰める牧に、にかっと笑う。 『喧嘩しに来た訳じゃないから安心しろよ。 さ、体育館まで案内してくれ。』 『これから、翔陽と練習試合なんだ。 何の用か知らないが、終わってからにしてくれ。』 突然海南を訪ねたマイケル。 これから一波乱起こる事を、まだ誰も知らない。 |