もやもや



ボスン。―――

 ベッドに体を沈めて、は真白い天井を見つめていた。

 頭の芯が、麻痺しているかのように、ぼーっとする。

 ふと、指で唇に触れてみた。

 何気ないその動作に、しばしキョトンとしてしまう。

 ―――キスされた。

 強く抱き締められて、哀しい瞳に痛いくらいに見つめられて…

(…あれ?)

 はがばっと体を起こした。

(キスって…好きな人とするんだよね………?)

 改めて思い出し、途端に?マークに思考を支配される。

 藤真は何も言わず、一度も振り返らず去って行った。

 小さくなって行く背中を見送っていた。

 その後、自分がどうしたのかわからない。

 気が付いたら自室の、ベッドに座っていた。

ー 俺は、いつまで"先輩"なんだ? ー

 ベッドの上にちょこんと座っている、ウサギの縫いぐるみを抱き締める。

「…どう言う意味なのかな………」

 ぽすっとウサギの頭に顔を乗せてみる。

 イヤじゃなかった。

 藤真は尊敬する先輩、嫌いな訳がない。

「でも………」

 自分は藤真が好きなのだろうか?

 ぎゅっと強く縫いぐるみを抱き締めて、は小さく溜息を吐いた。

 自分を抱き締めていた藤真の腕は、微かに震えていた。

 真っ直ぐに見つめられる視線から逃れたくて…目を閉じた。

「…わからないよ………」

 藤真に、聞こえてしまうのではないかと言うほど、ドキドキしていた。

 3年前と変わらず、一緒にいたいと思った事はあった。

 しかし、恋愛感情からなのか、どうなのかわからない。

 考えれば考えるほど、わからなくなって行く。

 胸が苦しい。

「…日本語って、難しいな…」

 love と like の、微妙な違いがわからない。

「…私、藤真先輩が、好き…なのかな………?」



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