からんからん。――― 「うわ〜、懐かしい!」 そう言って店を見回す君。 これくらいではしゃぐなんて…まだ子供だなと思いつつ、ちっとも変わってないその様子が少し嬉しい。 「先輩! あの席がいいです!」 いいよと返事をすると、嬉しそうに目を輝かせた。 2年。――― 女の子が変わるには、十分な時間だ。 「私は…マロンシャンテリーで、ミルクティーも付けて下さい。」 コラ。 苦笑う俺に、小さく舌を出して知らん顔。 …子供だな。 仕方ないな、今回だけだぞ。 「えへへv ありがとうございます。」 何だかんだ言って…甘いかなと思う。 でも、変わらない笑顔を俺に向けてくれたお礼みたいな物だから。 小さいのに何事にも頑張っていた君、猫のように気まぐれに甘えてくれた事が嬉しかった。 だから…怖かったんだ。 再びであった時に、君が、俺の知っている君でなかった時、どうすればいいのだろう。 「おまたせしました。」 ウエイトレスが注文の品を持って来た。 「いただきま〜すv」 召し上がれ。 手を合わせてにっこりと微笑む君。 いかん…最近頬が緩みっぱなしだ。 たるんでる場合じゃないだろ、俺。 目を閉じて小さく首を振っていた俺に、首を傾げた君。 「せ〜んぱいv」 そんな甘えた声なんか出して…今度は何が欲しいんだ? 俺がその笑顔に逆らえない事、知っているのだろうか。 「先輩のミルフィーユ… 一口ちょうだいv」 だから… その笑顔は反則だって。 「わv アリガトウございます。 私のも一口どーぞ。 はい、あ〜んして。」 言うとおりに口を開けたら、懐かしい味が口の中いっぱいに広がった。 考えてみれば、俺もココに来るのは2年ぶりなんだよな。 何が物珍しいのか、店中の視線が俺達に集まっている。 おそらく、彼女が可愛いからだろう。 どうせなら、もっといちゃついてしまおうか。 すっと、手を伸ばして、頬に付いたクリームを指ですくってやった。 「あ、どうも…」 赤くなるなよ…どこまで俺を無意識に惑わせるんだ。 「先輩、聞いてます?」 聞いてるよ。 「ゲーセン行きたいです! 先輩とプリクラ撮りたい!」 ホントに、表情がコロコロ変わるな。 見ていて飽きないよ。 「じゃ、行きましょう!」 俺の腕に自分の腕を絡ませて、歩き出す君。 昔。――― 言った台詞を取り消すよ。 柔らかい髪を、一度撫でた。 君の瞳に俺が写るのが嬉しくて。 細く笑ったら、変わらない眩しい笑顔が返って来るから。 ―――だから君が好きなんだ。 × × × × × × × × × × 藤真先輩の一人称です。 藤真→さん。 この「あ〜んして。」を飛ばすのが惜しかったので…おまけに。 それにしても… だから君が好きなんだ。――― 言われてみてえ!(笑) |