テスト勉強



。 無理に付き合わなくてもいいんだよ。 もう遅いし、部屋に戻りな。」

 神が優しく声をかけた。

 時刻は 11 : 00 。

「そ〜っすよ、ちゃん。 早く休んだ方が絶対いいに決まってる!」

 清田が続けるが、は細く笑っただけだった。

「だって、宗ちゃん文系でしょ。 他の教科を教えられるの?」

 神は答えに詰まった。

「俺は大丈夫っすよ!」

 清田が反言するが、は首を振った。

「私高校の課程は、向こうで終わらせたから。」

 にっこりと微笑んで続ける。

「私のせいで時間を無駄にしちゃって、ゴメンなさい。 でも、その分しっかり教えるから。」

 神は頭を抱えた。

 は一度決め込んだら、例え相手が誰であろうと譲らない。

 神はしぶしぶ納得して、3人は勉強を再開した。



ちゃん、ココは…?」

「コレはね、完了系だから…こう。」

 清田のノートに、スラスラとシャープペンを走らせる。

「コレも?」

「ん、自分で出来る?」

 つい先日出会ったばかりとは思えないほど、二人は自然だった。

(…少し妬ける。)

 しかめ面で参考書を見る神に、が声をかけた。

「宗ちゃん、その文の翻訳おかしいよ。」

 参考書に目を落として、神が首を傾げる。

「ほら、as があるから…」

(あ、本当だ。)

 勉強を始めて一時間程経った。

 集中力が切れているかもしれない。

「休憩しよっか。 信、お風呂入っておいで。」

 睡魔と格闘している清田に、神が言った。

「あ、はい! すぐ入って来ます!」

 走るように階段を下り、清田は浴室に直行した。

 神は小さく息を吐いた。

「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

 目を擦っているに、優しく問い掛けた。

「…アップルティー、ある?」

 眠いのか、とろんとした目で、は神を見上げた。

「探してみるよ。」

 神はを一人残し、階下に姿を消した。



 カップを二つ下げて戻って来た神は、部屋に入るなり苦笑いを浮かべた。

「…やっぱりね。」

 予想通りに、は机に突っ伏して寝入っていた。

 時刻は 12 時を少し回ったところだ。

 いつもなら、既に2人とも眠っている時間である。

。 起きなよ。 部屋に戻りな。」

 声をかけても、はピクリとも動かない。

。 風邪引くよ。」

 の肩を揺すった。

「…ん。」

 わずかに首を動かしただけで、は目を覚まさない。

「ほら、部屋に戻って。」

 もう一度揺すった時に、清田が戻って来た。

「先に失礼しました…って、ちゃん寝ちゃったんですか?」

 急いだためか、乱暴に拭いたらしい髪に変なクセがついている。

 は起きそうな気配がない。

 神は溜息を吐いた。

「信、手伝ってくれる?」

 そう言うなりを肩に担いで、窓の側に歩み寄った。

「何すればいいんすか?」

 神に続いて窓際に近付き、清田が訊ねた。

「少し、支えてて。」

 神はそう言ってを清田に預けた。

「えっ…」

 驚く清田に構わず、神は窓から身を乗り出した。

「落としたら…わかってるよね。」

 神に微笑まれて、清田の背に悪寒が走った。

 清田はちらっと、腕の中のに視線を落とした。

(な、なんか………)

 小さくて軽いのに、柔らかくて…温かい。

 の顔から目が離せない。

(やっぱり、可愛い…)

 肌が白く、人形のように整端な顔立ちである。

「信。 よこして。」

「は、はいっ!」

 神の声で、清田は我に帰った。

 の部屋に渡った神に、を渡すため、眠っているその体を抱き上げる。

「…ん、…君………?」

 清田の声のためか、急に抱き上げられたためか、がうっすらと目を開けた。

「あ、っと…そのっ………えっと…」

 自分を見上げるに、清田は思わず赤くなった。

「あ…清田君…」

 おそらく寝惚けているのであろう、はぼ〜っとした様子だった。

「おはよ、。」

 神が微笑んだ。

「寝るなら自分の部屋においで。」

 は無遠慮に清田を見上げていた。

「え…っと、ちゃん?」

 清田は固まったように、動けない。

「…えへへv 」

 ふいに、が微笑んだ。

 清田は自分の心臓が跳ね上がるのを感じた。

「いつも宗ちゃんと一緒だからわからなかったけど、清田君って背が高いね。」

 はそう言って、清田の胸に頭を預けた。

「一年でレギュラーで、髪が長くて、ヘアーバンドが似合って…」

 石と化し動けない清田に気付かず、は続けた。

「信、大丈夫?」

 見かねて神が言った。

 清田は我に帰り、神にを渡した。

 神はどこか複雑そうな顔をしていたが、寝惚けたと心臓破裂寸前の清田が、気付くはずがない。

 神に抱き抱えられながら、はそっと見を乗り出して、清田の頬に唇を寄せた。

「 っ〜〜〜〜〜 ! ///// 」

 清田は跳ね上がった。

 神の部屋のベッドの所まで退避 (?) して、真っ赤な顔でを見つめる。

 何も言う事が出来ず、頬を抑えたまま口をパクパクさせていた。

「…おやすみ。」

 儚く微笑んで、は窓際から姿を消した。



 ベッドに下ろしてやって間もなく、から規則的な寝息が聞こえて来た。

 無防備なその寝顔を見て、神は何とも言えぬ表情で微笑み、小さく溜息を吐いた。

、信は………じゃないんだよ…」

 その日の勉強は終了となった。

 清田が勉強所ではないのと、神が他の問題に気付いてしまった事が原因である。



余談だが。

 布団に入ってもの顔がちらついてしまい、純情な清田は眠れぬ夜を過ごした。



 × × × × × × × × × ×



 はい。 清田君と絡みたかったんです。(爆)
 これから絡む予定ですが、前菜と言う事で。
 ヒロインはアメリカ帰りですから、英語ペラペラです。
 しかし神さんは…いいお兄さんしてますね。
 清田君に対しては、飼い主でしょうか?(笑)


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