真剣勝負。 互いに譲らず、決着が付かない。 どれほどの時間が経ったのだろう。 清田の頬を、一筋の汗が伝った。 (何で…) が二人にとって大切な存在である事は知っている。 二人の気迫が、伝わって来る。 だが。 の前で、あえて争うなど、今までなら絶対になかったはずだ。 清田はちらっとを見た。 はらはらした様子で、二人の勝負を見ている。 頭に来る。 自分は、二人のように真剣に争うほど、の事を知らない。 どちらかが勝って負けて。 今までのようにに接さなくなれば、この少女はきっと悲しむ。 「っ!」 一瞬、藤真が神を抜いた。 そのまま、シュート体制に入る。 「止めろ!!」 気付いた時には、大声で叫んでいた。 突然の声に驚いたのか、二人の動きが止まる。 「清田…」 「こんな勝負、止めろよ! どっちが勝っても負けても、ちゃんには辛いだけだろ!!」 言い終えると同時に、の手を取って駆け出す。 「!」 「清田!」 三井と牧が、それぞれ叫んだ。 清田は振り返りすらしなかった。 「ちょっと、清田君! どこに行くの?」 力付くで引っ張られて、が訊ねる。 清田はいきなり止まると、の両肩をがっしりと掴んだ。 「ちゃん! 俺は、絶対に二人みたいな事はしない! 俺と付き合ってくれ!!」 突然の告白。 清田は自分の心臓がばくばく言っているのに気付いた。 はキョトンと首を傾げた。 「二人みたいな事? 1 on 1 の勝負をしないの?」 は首を傾げたまま続ける。 「付き合うって… どこに?」 ………………。 清田は全身の力が抜けるのを感じた。 ある程度は、少女が天然だと言う事を知っていたが。 (ここまでだったなんて…) 一世一代の告白が、台無しである。 が辛いだろうと思って、体育館から連れ出したのに。 「? 清田君、どうかした?」 罪多き少女は、無邪気にも首を傾げている。 「そんな意味じゃなくて、俺は…!!!」 「あ、牧さん。」 第三者の登場に、清田は再び気力を失った。 「いきなりどうした? 皆心配してるから、戻って来い。」 「はーい。」 牧につられて、歩き始める少女。 (…相手が悪かったな、清田。) 牧は小さく息を吐いた。 その後。 清田は一言もしゃべらず、は藤真と牧の 1on 1 を楽しそうに見物していた。 清田はこの日、ある事に気付いた。 手強いのは、神や藤真ではなく、自身である事を。 |