文化祭 2



 真剣勝負。

 互いに譲らず、決着が付かない。

 どれほどの時間が経ったのだろう。

 清田の頬を、一筋の汗が伝った。

(何で…)

 が二人にとって大切な存在である事は知っている。

 二人の気迫が、伝わって来る。

 だが。

 の前で、あえて争うなど、今までなら絶対になかったはずだ。

 清田はちらっとを見た。

 はらはらした様子で、二人の勝負を見ている。

 頭に来る。

 自分は、二人のように真剣に争うほど、の事を知らない。

 どちらかが勝って負けて。

 今までのようにに接さなくなれば、この少女はきっと悲しむ。

「っ!」

 一瞬、藤真が神を抜いた。

 そのまま、シュート体制に入る。

「止めろ!!」

 気付いた時には、大声で叫んでいた。

 突然の声に驚いたのか、二人の動きが止まる。

「清田…」

「こんな勝負、止めろよ! どっちが勝っても負けても、ちゃんには辛いだけだろ!!」

 言い終えると同時に、の手を取って駆け出す。

!」

「清田!」

 三井と牧が、それぞれ叫んだ。

 清田は振り返りすらしなかった。



「ちょっと、清田君! どこに行くの?」

 力付くで引っ張られて、が訊ねる。

 清田はいきなり止まると、の両肩をがっしりと掴んだ。

ちゃん! 俺は、絶対に二人みたいな事はしない! 俺と付き合ってくれ!!」

 突然の告白。

 清田は自分の心臓がばくばく言っているのに気付いた。

 はキョトンと首を傾げた。

「二人みたいな事? 1 on 1 の勝負をしないの?」

 は首を傾げたまま続ける。

「付き合うって… どこに?」

 ………………。

 清田は全身の力が抜けるのを感じた。

 ある程度は、少女が天然だと言う事を知っていたが。

(ここまでだったなんて…)

 一世一代の告白が、台無しである。

 が辛いだろうと思って、体育館から連れ出したのに。

「? 清田君、どうかした?」

 罪多き少女は、無邪気にも首を傾げている。

「そんな意味じゃなくて、俺は…!!!」

「あ、牧さん。」

 第三者の登場に、清田は再び気力を失った。

「いきなりどうした? 皆心配してるから、戻って来い。」

「はーい。」

 牧につられて、歩き始める少女。

(…相手が悪かったな、清田。)

 牧は小さく息を吐いた。



 その後。

 清田は一言もしゃべらず、は藤真と牧の 1on 1 を楽しそうに見物していた。

 清田はこの日、ある事に気付いた。

 手強いのは、神や藤真ではなく、自身である事を。



back