「おい、校門にめっちゃめんこいのがおるで!!」 クラスメイトの一言で、男子全員が窓辺に寄った。 「? 南、来てみ。 アレ、何か見たことあらへん?」 岸本の声に、南が首を傾げた。 「ま〜たお前は。 可愛い子見ると、そないな風に言うて………」 窓辺に寄って、南は目を見開いた。 「…アレや、アレ。 あのガキの女や。」 南の声に、岸本が納得したように頷く。 「行くで。 お前も来い。」 「南、岸本!! 授業中だぞ!!」 古文の教師が怒鳴っていたが、それを一瞥して二人は教室を出た。 「おー、久しぶりやな。」 南の声に、は小さく笑った。 「一人で危ないで? 豊玉はガラ悪いって評判やからな。」 岸本が言った。 「え〜っと……… あ、やったな?」 「はい、南さんと岸本さん。 おはようございます。」 丁寧に頭を下げるに、二人は顔を見合わせた。 ((やっぱり… 相変わらず、ずれてんなぁ…)) 南はしばらくを見据えていたが、やがて小さく息を吐いた。 「…どっか行こか?」 朝一で大阪の、豊玉高校を訪ねて来た少女。 何か、訳があるのだろう。 「とりあえず、部室でええな?」 は頷いた。 「ほい、缶コーヒー・ミルク。」 「あ、どうも。」 南が投げた缶コーヒーを受け取ったを見て、岸本が笑う。 「三年前と、全く同じ光景や。」 「お前には奢らんで。」 缶を開けて、一口飲む。 「どしたん? 訪ねてくるのは歓迎やけど、いきなりすぎるやろ?」 じっとを見据える。 はわずかに俯いた。 「…お願いが、あるんです。」 言い難そうな空気。 南と岸本は、顔を見合わせた。 「俺らに出来る事なら、聞いてやってもええで。」 岸本はそう言ったが、南は溜息を吐いた。 「………まだ、忘れられんのか?」 沈黙の答えが、肯定していた。 南は続ける。 「まぁ、しゃーないな。 でも、も辛いんちゃう?」 俯いたままの。 南はの肩を叩いて立ち上がった。 「行くで。 三年前の道、そっくりそのまま案内したるわ。」 風が吹いた。 |