宣戦布告



(まさか、神がな………)

 後片付けを終えて、藤真が息を吐いた。

 最後に部室に鍵をかける。

 思う事は色々あった。

 昔から、に対しては、こう言った問題が尽きなかった。

 ただ、あの頃は。

 自分の気持ちがはっきりしていなかった。

 それを指摘されて、それ以上に対して、どうこう思えなかったのだ。

「?」

 藤真は足を止めた。

 誰かいる。

「清田?」

 ゆっくりと振り向いたのは、他でもない清田だった。

「何をしている? 一人か?」

 藤真の問いには答えず、清田は口を利いた。

「正直に、答えて下さい。」

 いつになく、真剣な声。

ちゃんの事… どう思ってるんですか?」

 唐突な問いに、藤真は眉を寄せた。

「答えて下さい。」

 藤真は溜息で答えた。

「それを言うために残っていたのか。 早く、帰れ。 もう遅い。」

「藤真さん!」

 藤真は清田を見据えた。

「お前に答える義理はない。 彼女を傷付けたくないなら、これ以上首を突っ込むな。」

 清田の中で、何かが切れた。

「納得できません!!」

 藤真を睨みあげたまま、清田が続ける。

「いっつも…! そうやって逃げるみたいに…!! 俺は確かに、あんた達みたいにちゃんの事、よく知らないし、昔に何があったかなんて、検討も付かないけど… だけど!!」

 清田は一度、大きく息を吸った。

「俺は逃げない! ちゃんが好きだから! そうやって逃げてる奴らなんかに、ちゃんは渡さない!」

「…!」

 藤真が息を飲んだ。

「俺の気持ちは、譲らない!!」

 その言葉を残して、清田は駆け出した。

 藤真はしばらくその場から動けなかった。

 前髪を、くしゃっと、かきあげる。

 思い出すのは、昔の事。

 藤真は自嘲気味に笑った。

「……………。」

 何と呟いたのかは、聞き取れなかった。



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