車窓



「ほい。」

 南に渡された袋を受け取る。

「一番人気の駅弁や。 食え。」

「…ありがとうございます。」

 は小さく頭を下げた。

「迷惑かけてすみません。」

 南が首を振る。

「ええねん。 俺も岸本も迷惑なんか思ってへんよ。」

「そや。 炎の奴は、俺らの弟みたいなもんやったし。」

 がはにかむ。

「今度は、二人で神奈川に遊びに来て下さい。 私が案内しますから。」

 岸本が嬉しそうに笑う。

「おう。 期待するわ。」

 南がを見据える。

「…やっぱ、笑った方がええ。 ええ女は泣いたらあかんねん。」

 が首を傾げる。

「どうしてですか?」

「何でもや。 元気でがんばれや。」

 が頷く。

「はい。 ありがとうございました。」

 ホームにアナウンスが響く。

「ほら、乗れや。 ちゃんと着いたら、連絡せーよ。」

「はい。 お世話になりました。」

 新幹線に乗り込み、車窓を開ける。

「何や?」

「…また、遊びに来てもいいですか?」

 上目使いで見上げられて、南は小さく笑った。

「いつでも来ればええ。 でも、次からは先に連絡せーよ。」

「はい。」



 走り出した新幹線を見送って、南は小さく息を吐いた。

「やっぱりエエ女に化けたな。 泣かれた時、マジで口説きたくなったわ。」

「………オイ。」

 マジな南に、岸本が溜息を吐いた。



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