前半終了。 34−21と、スコアは翔陽がリードしていた。 「…ふむ。」 は指を顎の下に添えて、何やら考えているようだ。 選手達は、かなり疲れていた。 県下一の高さを誇る翔陽相手に、対する湘北は赤木が抜けて制空権を取れないでいる。 まだ、藤真がベンチであると言うのに。 「…桜木君、E安田先輩と交代! 後半残り、10分になったら戻します。」 「なぬ〜っ!? 待って下さいさんっ!」 安西先生にすら抗議する桜木でも、に掴みかかる事はしない。 「「引っ込んでろ、ドヘタクソ!」」 三井と宮城が恨めしそうに言った。 「………帰れ、どあほう。」 流川が追い討ちを掛けるように、ぼそっと呟く。 事実、前半に桜木のミスは目立った。 走って跳べてスタミナだってあるのに、それを生かしていない。 技術が初心者に戻っている。 「とりあえず、翔陽のペースを変えましょう。 ボールが上がっても、強引に突っ込まないように。」 試合中、何やらメモっていたノートを見ながら、が指示を出す。 「ゲームメイクは、キャプテンと、エースの仕事ですよ。」 宮城がぎくっとしたのがわかった。 流川は、当然だと言う顔をしている。 は微笑んだ。 「これからの湘北は、貴方が作るんですからね、宮城先輩。」 「…オレ、が?」 宮城が驚いたように、を見つめた。 「何だ、ずいぶんと弱気じゃねえか。」 三井が鼻で笑い、 「…やれやれ。」 と、流川が大袈裟に溜息を吐いた。 何か言いた気に、宮城ががばっと立ち上がった。 「宮城先輩。 前キャプテンの代わりになろうなんて思わないで下さい。」 の言葉は透き通るように、耳によく入った。 「宮城先輩は宮城先輩です。 代わりになる必要は、ありませんよ。」 いくらか、気持ちが軽くなった気がした。 「…そう、だよな。 よし!」 宮城は自分の両頬をパンと叩いた。 吹っ切れたように、その表情はすっきりしている。 「三井先輩、流川君。」 が口元で小さく笑った。 その何かイタズラめいた表情に、2人は同時に、どきっ とさせられる。 「へばりましたか?」 カラカラと笑いながらのその一言は、2人には効き目の良すぎる薬も同然だ。 馬鹿にされたようで、二人はムッとした。 「「誰が!」」 声を揃えて勢いよく立ち上がった二人を見て、がクスッと笑った。 「後半、期待しますよ。」 ぽんと肩を叩かれて、二人は同じような事を考えた。 ((絶対、負けねえ!!)) が乗せるのが上手いのか、メンバーが単純なのか。 新たに気合が入り、選手達の顔が引き締まった。 (表情が変わった。) 翔陽のベンチ、藤真は湘北側のベンチを見て細く笑った。 「遠慮するなよ。 もっと強引に当たれ。 湘北は、おそらくは桜木を引っ込める。」 選手達を一瞥して続ける。 「もはや、翔陽(うち)の高さに対応できなくなるだろう。 インサイドを狙え、花形だ。」 花形が頷いた。 藤真は湘北ベンチ、指示を出すを見て小さく笑った。 「…後半は、俺も行く。」 を見つめたまま言って、視線を戻した。 「開始5分後から、3分。 一気に離すぞ。」 それぞれ後半の作戦を立てて、10分のハーフタイムは終了した。 |