翔陽戦(後)



「桜木君。 リバウンドを制する者は…」

「ゲームを制する! ですよね、さん!」

 大きな声でしっかりと答えた桜木に、が大きく頷いた。

ピピー。

「メンバーチェンジ! 湘北!」

 後半残り13分。

 翔陽に藤真が加わって、わずか2分。

 あと6点まで詰めた点差は、倍に開いていた。

 少し早いが、カケに出るなら今しかない。

 は桜木をコートに戻した。

 流川も三井も、マークのキツイ中頑張っていた。

「ねえ、。 藤真はダブルチームで抑えた方がいいんじゃ…?」

 藤真とマッチアップしている宮城、先程から尽く抜かれている。

 は首を振った。

「一対一でぶつけます。 ガード勝負は、宮城先輩にかかってますから。」

 藤真か花形、どちらかを狂わせる事ができれば、翔陽の得点力は半減する。

 はそう睨んでいた。

 ボールがリングに当たって跳ねた。

「リバウンド!」

 彩子が叫んだ。

 ゴール下で、桜木と花形がポジション争いをしている。

「桜木君! スクリーンアウト!」

 が叫んだ。

「…スクリーンアウト…!」

 桜木は一瞬ハッとした。

 フェイクを一ついれて、花形の前に回り込む。

「リバウンド王・桜木!」

 やった! と、彩子とが手を取り合って飛び跳ねた。

「よっしゃ、速攻!」

 既に走り出している宮城に、パスが通る。

「来い、宮城!」

 藤真の戻りが早い。

 強引に突っ込んだ宮城からボールを奪った。

「リョータ!」

 彩子が叫んだ。

「クソッ!」

 舌打ちして、宮城が慌てて戻る。

 流川と三井の二人を交わして、フェイダウェイジャンプシュートがキレイに決まった。

(…早い。)

 彩子がごくっと息を飲む。

「…やっぱり上手いな、藤真先輩。」

 誰に言うでもなく、が呟いた。

 湘北はタイムを取った。

 今の時点で14点差。

 これ以上離されたら、追い付けない。

 翔陽は藤真をベンチに下げた。

 わずか3分で、藤真は6ゴール決めていた。




 藤真に抜かれた事がプライドに触ったのか、流川はまさに絶好調だった。

 残り5分で、3ゴール差にまで詰められ、翔陽はタイムを取った。

 現在 60−55 。

「桜木君、リバウンド取れるようになりましたね。」

 が嬉しそうに言った。

「くらえ、庶民シュート!」

 桜木が跳んだ。

バゴンッ。

 ボールはゴールに当たって跳ね返った。

 花形のリバウンドで得点は翔陽に加算された。

「…あとは、シュートね。」

 彩子が苦笑った。

 前半からパスが来るのだが、一度もゴールに入れていない。

「ドンマイ、桜木君! 動きが硬いよ! シュートは膝から!」

 が言った。

 この試合7本目、三井の3Pが決まった。

 残り時間1分を切った。点差は4点。

「伊藤! 下だ!」

 宮城がスティールから、流川にパスを出した。

 翔陽のディフェンスを交わして、シュートに持ち込む。

「打たすな、花形!」

 花形が跳んだ。

「…決めろよ、どあほう。」

 流川はゴールからわずかに離れたフリーの桜木に、パスを出した。

 少し驚いた桜木だが、すぐにシュートのフォームに入る。

「桜木君! 左手は?」

 の声がはっきりと聞こえた。

「…添えるだけ。」

 桜木のシュートはキレイに弧を描いてリングに吸い込まれた。

 試合終了の、笛が鳴った。



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