♪〜。

 日の暮れかけた、影が伸びた道。

 いつものように鼻歌を歌いながら、仙道は歩いていた。

 ふと、足を止める。

チャン、大丈夫かな〜?」

 行方がわからなくなって、二日。

 見つかったら連絡するから。

 神はそう言った。

「可愛いからな〜、誘拐とかされてないといいけど。」

 少女に対して、特別な感情はまだない。

 ただ。

「…放っておけないんだよね。」

 ふとした瞬間に時々見せる、捨てられた子猫のような淋しい目。

と。

どん。

「っと…」

 曲がり角で、勢いよく人とぶつかった。

 体の大きい仙道は少しふらついただけで済んだが、ぶつかって来た方は尻餅を付いてしまった。

「大丈…」

 手を差し伸べようとして、仙道は目をぱちくりさせた。

チャン?」

 まさかこんな場所でぶつかるなんて。

 驚く仙道を他所に、はすぐに立ち上がると再び駆け出した。

チャン、待ってよ! あっ!!!」

 を呼び止めようとして、仙道がその場にしゃがみこんだ。

 その声に驚いて、が振り返る。

 仙道はうずくまって胸を押さえていた。

まさか。

 自分とぶつかって、どこか身体を強く打ったのではないだろうか?

「せ、仙道さん…?」

 近付いて、恐る恐る手を伸ばす。

 その小さな手を仙道の大きな手が包んだ。

「捕まえた。」

 の手がわずかに震えている事に気付いて、仙道はにっこりと笑った。

「大丈夫、恐くない。」

 その人が良さそうな笑顔に、緊張の糸が切れる。

「………っ…」

 ぽろぽろ涙が溢れた。

 仙道は掴んでいた手を引いて、を抱き寄せた。

「とりあえず家来る? すぐそこだし。」



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