忠告



「冗談だと思っているでしょう?」

 エリオルはゆっくりと、それぞれの顔を見比べた。

の祖父も、それを望んでいます。 それに、医者になるのがの夢でもある。」

 言葉を探せない一同。

 辛うじてマイケルが口を挟んだ。

『オイ、何言ってやがる! 勝手な事、抜かしてんじゃねえよ!』

『勝手なのはどっちです? マイク、貴方には病院は任せられないでしょう?』

 英語での、ちょっとした口論。

 赤点軍団には何を言っているのか、さっぱり理解できない。

「? 大声で、どうかしたの?」

 が顔を覗かせた。

 マイケルは、突然、の細い両肩を掴んだ。

っ! エリオルの奴が言ってるのは、本当なのか !? 』

 いきなり問い詰められても、には首を傾げることしか出来ない。

 誰かの助言を求めようとも試みたが、皆自分を見据えたまま、何も言わない。

「………どうか、したんですか?」

 は面子を代わる代わる見交わした。

「藤真先輩…?」

 藤真は神と顔を見合わせただけで、何も言わなかった。

…」

 口を利いたのは、三井だった。

 俯き加減のその表情が、よく見えない。

「何なんだよ、ホント… 分かんねえよ。」

 どこか投げやりな声。

 事情のわかっていないは、首を傾げる事しか出来ない。

「俺らは、本当にお前の事、何にも知らねえんだな…」

 皮肉っぽく、言う。

「三井、先輩…?」

「もう、うんざりなんだよっ!!」

 声を荒げた三井に、が一瞬で怯えたのが分かった。

「何で何も言わねえんだよ! 言わなきゃ分かるものもわかんねえだろ!!」

 三井は続ける。

「俺達が、どんな気持ちでいるのか、考えた事あんのかよっ!!!」

 そこまで言って、やっと一息吐いたらしい。

 三井は真っ直ぐに、を見つめていた。

 は小さく首を竦めた。

「ゴメンなさい…」

 無理して笑顔を作っているのか、今にも泣き出しそうな声だった。

 三井は小さく舌打ちをした。

「…じゃあな。」

 そう一言だけ告げて、その場から去って行った。



 三井が帰ってから、解散の色が濃くなり、皆帰り支度を始めていた。

 マイケルはエリオルの顔も見たくないのか、充てられた部屋に篭っていた。

 エリオルは首を竦めた。

「何でしょう?」

 藤真に呼び止められたのだ。

「一体どう言うつもりかは知らないけど、いい加減にしろよ。」

 真っ直ぐに、エリオルを見据える。

「お前は、彼女を傷付けた。 絶対に許さない。」

「肝に銘じておきますよ。」

 藤真の嫌な予感が当たった。

 二週間は、無事には過ぎてくれないようだ。



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