譲れない



 家の前で、神は足を止めた。

「あ、宗ちゃんおかえり。」

 にっこり微笑んだの隣に、まさかの人物。

「ノブ………」

「見て、宗ちゃん。 清田君が、UFOキャッチャーで取ってくれたの。」

 は上機嫌で、プーさんを抱きしめていた。

「良かったね、。」

 笑顔で続ける。

「ほら、家に入りな。 そろそろ冷える時間だろ。」

「ん。 清田君、ありがとう。 バイバイ。」

 清田に手を振って、が家に入る。

 ドアが閉まったのを確認して、神は清田を見据えた。

 まず、溜息。

「どう言うつもりか知らないけど、には近付かないように言ったはずだ。」

 少し、怒ったような口調。

 清田は全く臆せずに、神を見上げていた。

「嫌っす。」

 神の声に、短くそう答える。

「ノブ、俺はが心配で言ってるんだ。」

 いつもは優しい先輩が、少し眉を顰めて言った。

「神さんも、藤真さんと同じなんすね。」

 突然出て来た第三者の名に、首を傾げる。

「どうして、嘘を付くんですか? それでいいんですか?」

 真っ直ぐな瞳に、言葉を飲み込んだ。

「…お前には関係ない。」

「関係なくないっすよ!」

 清田はめいっぱい神を睨んでいた。

「昔の事は聞いても教えてくれないし、お前には関係ないって、いっつもいっつも! そんなんじゃ、納得出来ません!!」

 神は何も言えずに黙っていた。

ちゃんの事、本当は好きで好きで仕方ないくせに!」

 神に何か言って欲しかったのかもしれない。

「自分の気持ちに嘘付いて! そんな人に、俺は負けたくない!」

 だから、神経を逆撫でするようなことを言った。

ちゃんはっ!! 絶対に譲らない!!!」

 何も知らないから、気持ちが強かった。



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