おまけ



 少し冷え込んだ川原。

「よし! ケーキ食べに行こ!」

 すっかり吹っ切って立ち直った様子の樋口に、が頷く。

「ずっと側におってくれたな。 ほんまありがとう。」

「ん。 落ち込んでるヒマないよ。 明日から、また練習だもんね。」

 にっこり笑ったに、肩の荷が下りるような、そんな錯覚を覚える。

(…あかん。)

 気付かれないように、小さく首を振った。

「じゃ、スウィート行こか! あ、それとも、アイスクリームがええ? バニラって店があんねんけど、中々イケルんや。」

 樋口の言葉に、が悩む。

「ん〜… じゃ、バニラに行こう!」

 先に立ち上がって、の手を引く。

「竜ちゃんに貸したから、自転車ないねんな。 ちょっと歩こうな。」

「ん。」

 ごく自然に、手を繋いで歩き出した。

「背だけじゃなくて、手も小さいなぁ。」

「大きくなるもん。」

 揶揄る樋口に、ぷぃっとそっぽ向いて答える。



!」

 突然の声に、が足を止めて振り返った。

「誰?」

 見覚えのない顔に、樋口が首を傾げる。

「宗ちゃん。」

「いや、知らんって…」

 の声に困った様子の樋口。

 それを見て、少年が小さく笑った。

「初めまして。 の幼なじみの、神宗一郎です。」

 簡単に自己紹介を済ませて、を見据えた。

「試合お疲れ様。 どこか行くの?」

「ん、アイス食べに行くの。」

 笑顔で答えるの、頭を撫でる。

「そうなんだ。 をよろしくね、樋口くん。」

「何で、知ってるん?」

 眉を寄せる樋口に、神が首を竦めた。

「泉沢の12番は有名だよ。 それに、から話も聞いてるしね。」

 にこりと笑って、神が続ける。

「じゃ、遅くならないように。 気を付けるんだよ。」

「ん! バイバイ。」

 手を振って神を見送るに、樋口が聞く。

「宗ちゃん、バスケやっとるん?」

「ん、センター。」

 少し唇を尖らせて、樋口がぼやいた。

「…デカイ思ったわ。」

 続ける。

って、呼ばれとるん?」

「ん、何で?」

 首を傾げるに、ぷいっとそっぽ向いて答える。

「…何でもあらへんわ。」

 川原に、二つの影が伸びた。



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