ストレート勝負



「よし! 決めたわ!」

 突然の声に、が首を傾げる。

「何を決めたの?」

 樋口はじっとを見据えて、一度深呼吸した。

「ボスが休みくれる言うたやん? 八月の、合宿前後に4日休んでええって。」

「そうなんだ?」

 自分を見上げる、

 見上げられるのは大分慣れたはずなのに、少し緊張する。

「…ちゃんは、その間家族で旅行とか…行くん?」

 一瞬揺れた瞳、樋口はそれを見逃さなかった。

−「…どうしたん?」−

 その言葉が発せられるより先に、が首を振った。

「行かないよ。 樋口くんは?」

 そう言うは、いつものように笑っていて。

 先ほどのは、自分の気のせいだろうかと考える。

「旅行と違うけど、大阪に帰るんや。」

 一度、咳払いして続ける。

「…ちゃんも、一緒に行かへん?」

 が目をぱちくりさせて、樋口を見上げた。

「どうしても一緒に来て欲しい! オレ、ちゃんの事好きやから、ちゃんにもオレの好きな人達に会うて欲しい!」

 まっすぐに、少女を見据える。

「ん。 お邪魔じゃなかったら、行く。」

 伝わったのだろうか?

 まぁ、少女がぽや〜っとしているのは知っている。

 自分自身も、どれほど少女を好いているのか、まだわからない。

 とりあえず、友達。

 今はそれでいい。



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