Side 藤真



 わずかに香る、シャンプーの匂い。

 うっすらと目を開ける。

 視界の隅に、見覚えのある鳶色の髪が映った。

(…そうか、泊まったんだよな。)

 腕の中、少女は気持ち良さそうにスヤスヤ眠っている。

 こんなに近くで、少女の顔を見るのは初めてだ。

 白い肌、柔らかい鳶色の髪、長いまつげ、花びらのように薄く色づいた頬と唇。

 思っていた事だが、やはり美少女だ。

 そして何よりも、小さい。

 この小さい体のどこに、あの底知れない元気があるのだろう。

 いつも元気で明るくて、しっかりした強い子だと思っていた。

 雷をあんなに怖がるなんて、思わなかった。

 あの時震えていた小さな手。

 この少女に無理をさせていると思うと、胸がつまりそうだ。

 自分が強いと思っている少女は、強がっているだけなのかもしれない。

 ふいにそんな考えが頭を過ぎって。

 守ってやらないと。

 変な使命感に苛まれた。

 はと言うと。

 まだしっかりと藤真のシャツの裾を握っていて。

 その様子が、微笑ましかった。

 少し、に身を寄せて抱きしめる。

 この心地良い温もりは、起きるにはまだ惜しかった。

 しかし、それよりも。

 いつもはしっかりした少女が甘えてくれているようで、少し嬉しかった。



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