「あかん!!」

 飛び起きた。

 勢い余って、ベッドから落ちる。

「アダっ…!」

 思いっきり顔を打った。

「鼻が潰れそうや…」

 ちらっと時計を見ると、明け方の4時を少し過ぎた所。

 樋口はゆっくり身体を起こした。

 そのままベッドに、背中を預けて寄りかかる。

 夢を見た。

 すごく嫌な夢だった。

 いつもは目覚めが悪いのに、その夢のおかげで一気に目が覚めた。

 しかし、本当に。

「嫌な夢やった…」

 先日に聞いた話が、それほどショックだったのだろうか。

 夢の中。

 今ではなく、少し成長したと、藤真。

『…私… きっと先輩の事、好きだった…』

 その前後の出来事や会話は全く覚えていない。

(2〜3年後くらいか? ちゃん、キレイになってたなぁ。)

 の側にいたのは自分ではなく、藤真だった。

 くしゃっと、少し長い髪を握る。

 悔しかった。

 現実でも夢の中でも、常にの側にいるのは、自分ではなく藤真である。

 自分がこんなに嫉妬深いなんて、に出会うまで知らなかった。

「…正夢になるんやろうか。」

 力なく、呟く。

「イヤや。 やらんで…」

 力なく首を振る。

 自分の気持ちをはっきりを自覚した晩に、何故あんな夢を見たのだろうか。

 悔しくて、涙が出そうだった。

ちゃんの側におるのは、オレや。 …誰にもやらん。」

 そう呟いて、きつく唇を噛んだ。



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