引退試合


 12月23日、午後 5:00 。

ピー。

 笛の音が響いた。

「ただ今より、 3 vs 3 の試合を行います!」

 審判は二葉京。

 藤真引退後、本日より、新キャプテンに任命されたばかりである。

「ジャンプボール! 指名するわ!」

 樋口が藤真を指差した。

 身長差は、15センチ。

「お前がよく飛ぶのは知っている。 手加減しないぞ。」

 ボールが放られた。

 二人が飛ぶ。

 取ったのは藤真だった。

 後ろに控えていた大祐の方へ、ボールを弾く。

バチッ。

 読んでいた竜がカットして、そのまま走った。

 一直線にゴールへ向う。

 跳んだ。

「!」

 誰もいないだろうと思っていたのに、真琴に阻まれた。

「くっ…」

 仕方ないので、後ろへノールックパス。

 にボールが渡った。

 得意のレイアップシュート。

「よっしゃあ! 先制点貰いや!」

 樋口がガッツポーズをした。

トッ。

 弾かれた。

 驚く

 藤真は反対側のゴールを見た。

「大祐!」

 走り出していた大祐に、パスを出す。

 先制点は三年チームだった。

 藤真が樋口とを見据えた。

「この一年間… 誰かさんのおかげで速い展開のゲームが得意になったんだ。」

「ほぅ、よかったな。」

 眉を寄せた樋口に、細く笑う。

「同じチームで1年見て来たんだ。 そう易々と点が取れるなんて思うなよ。」

 藤真の言葉に、大祐も真琴も頷いた。

「たかがゲームだと言っても、中学最後の試合。 俺は負けるつもりはない! さぁ、かかって来い!」

 三人が眉を寄せた。

「こっちかて負ける気はないわ! 偉そうな口叩いて! 覚悟せーや!」

 現役チームのボール。

 試合を見ていた翠が、少し驚いたように呟いた。

「健ちゃんはともかく、マコちゃんもアニキも… こんな上手かったっけ…?」

 ことごとくカットされ、シュートも阻まれ、中々点がとれない。

「それなりに、責めのパターンは知っているぜ! 身長差もあるし、お前等に点はやらねえ!」

 大祐の声に樋口が舌打ちした。

「くそ! 理屈っぽいなぁ、年寄りは!」

 突っ込む。

(フックショット!)

「打たせねえ!」

ビッ。

 パス。

「一つ忘れてるよ。」

 竜だった。

 3Pラインから、ボールを放る。

 ボールはゴールに吸い込まれた。

「ふぅ。」

 1ゴール奪うのに、思った以上に時間がかかった。

「高さはないけど、ボク等は皆、外からも中からも点が取れるんだ。 ディフェンスは広げた方がいいにょ☆」

 べえと、小さく舌を出す。

 藤真が笑った。

「大祐! ゴール下にいろ! 俺と真琴で、ボールを運ぶ。」

 樋口と、を見た。

(成長したな…)

 ついこの間まで、基礎練習をやらせていた気がするのに。

 二人の成長が、嬉しかった。

「さぁ! 取り返すぞ!」

 樋口が首を振った。

「一対一やったら、まだ勝てるかわからんけど、2対1なら、負けないで。」


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