12番のユニフォーム



「集合〜!」

 大祐が声を張り上げた。

 佐藤コーチが、ニコニコしている。

「今日は、ユニフォームを配り、来週から始まる公式戦のレギュラーを発表します。」

 今年は、入部テストもあったため、例年に比べて一年が少ない。

 藤真は一年の方をちらっと見た。

 樋口と翠と…

 この一月未満、出来る限りの事はして来たつもりだ。

 果たして、は、レギュラー枠に入れるだろうか。

 ユニフォームが手渡された。

 翠は、11番、と樋口は12番だ。

 ユニフォームを貰えなかった選手が、唇を噛み締めていた。

 続いて、コーチの口から、レギュラーが発表される。

「まず、男子から。 4番・藤真くん。 5番・佐倉くん。」

 4番の重みに、藤真がゆっくりと息を吐いた。

「6番・石井くん。」

 三年の、長身プレーヤー。

「7番・二葉くん。」

 二年の京の名が呼ばれた。

「期待していますよ。」

 佐藤コーチは続ける。

 レギュラー枠は、残りあと一つ。

 佐藤コーチが、にっこりと笑った。

「12番・樋口くん。」

「うっそ〜!」

 翠が驚いて声を上げた。

 樋口は少し驚いたように佐藤コーチを見上げた。

「期待していますよ?」

 にっこり笑った佐藤コーチ。

 樋口が力強く頷いた。

「まかせとき! さっちゃんの期待は裏切らんで!」

 藤真は胸を撫で下ろした。

 自分が予想していた、ベストメンバーだ。

 やっぱり、コーチはプレーヤーをよく見ている。

 続いて、女子の発表。

「4番・黛さん。 5番・水瀬さん。 6番・西野さん。 8番・真辺さん。」

 全て、三年。

 藤真は息を飲んだ。

「11番・佐倉さん。」

「えっ…」

 翠が驚いて様子でコーチを見上げる。

 佐藤コーチはニコニコしていた。

 藤真は小さく息を吐いた。

 やはり、まだにレギュラーは早かったようだ。

 コーチは続ける。

「12番・さん。 貴女は、場合によって、真辺さんと交代で入ってもらいます。 これからも頑張るように。」

「はい。」

 脇で様子を見ていた竜が、京に耳打ちする。

「12番が、一年でいいの?」

 藤真が答えた。

「泉沢のジンクスを知っているみたいだな。」

 ふいに微笑まれて、竜が少し赤くなる。

「7番と12番の選手が鍵を握る。 女子の方も、そのジンクスにかけてもいいだろう。」

 藤真が竜に、ウィンクする。

「女子の7番、空けておくからな。」

 竜は京の背に隠れた。

「ときめいてしまった自分が情けない… ///// 」

 悪戯に笑って、藤真が続ける。

 頬を赤めた竜の隣、に声をかける。

! お前はまだ練習だ!」

 突然の藤真の声に、がびっくりして、飛び跳ねた。

「はい! チュッパチャップスは、ストロベリーです!」

「「「は?」」」

 首を傾げたバスケ部を他所に、はボールを手に、ドリブルを始めた。

 その様子を見て、竜が小さく笑う。

「ストロベリーが好きなんだ。 覚えておこ♪」

 このレギュラー発表が、のちに大きな波乱を招く事になる。



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