デビュー戦



 同じ事に気付いていた。

 だけど、その予想は外れて欲しかった。

 後半開始直後。

 翠にキツイマークが付いた。

 ボールに、触れる事もままならない。

 ちらっと、隣の樋口を見る。

(コイツ、上手くなる。)

 冷静にゲームを読めるのは、一種の才能だ。

(俺が卒業したら、ガードにしてもいいかもな。)

 そんな事を思った。

「あ〜っ! 何しとんねん、ドアホ!」

 口が悪いのさえ、どうにかなれば。



 点差が開いた。

 真琴が肩で息をする。

(翠ちゃんにボールが回らない… 他にもマークが付いてるし…)

「マコちゃん!」

 翠の声で我に返る。

「あ…!」

 抜かれた。

 一歩も反応できなかった。

負ければ、廃部。

 プレッシャーが肩に重く圧し掛かる。

 頬を、一筋の汗が伝った

「…さん。」

 佐藤コーチがを見つめる。

「アップは出来てますね? 交代です。」

ピィー。

「交代、黄・8番。」

「今まで見ていて、何か気付いた所はありますか?」

 コーチがに微笑んだ。

「信じてますよ、行ってらっしゃい。」

 小さな肩を叩くと、元気な笑顔が返って来る。

「はい!」



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