邂逅



「うっわ〜… すっごい人…」

 翠が舌を巻いた。

 これまでの試合とは、明らかに違う。

 今日の試合で、ベスト4が決まる。

 雑誌やら、地方新聞やらの記者の姿も見える。

「ど、どうしよう………」

 早くも緊張している真琴に、秋山が小さく息を吐いた。

 今日の引率は、佐藤コーチではない。

 泉沢バスケ部には、顧問は一人しかいない。

 佐藤コーチは、男子の方の引率で、隣町の体育館にいるはずだ。

 いつもなら応援しているはずの竜も、今日は男子の方に付き添っていた。

「ん、はどこに行った?」

 首を傾げる秋山に、翠が答える。

「トイレじゃない? すぐ返って来るよ。」

 秋山が、眉を寄せる。

「…更衣室の場所、知ってるよな?」

「あ…」



「あれ?」

 は首を傾げていた。

「更衣室の場所、聞いてない…」

 困ったように腕を組んで考えていると。

「うっわ〜、小さい!! 見てみて!」

 背後からの声に、振り返る。

「やだ、めっちゃ可愛い! ピナ(妃奈)、見てよ! お人形さんみたい。」

 三人の少女達。

 より、かなり身長が高い。

「? スポーツバッグ? 君、選手?」

 ピナと呼ばれた女生徒が、首を傾げる。

「おはようございます! 泉沢のです!」

 元気いっぱいに頭を下げるに、少女達は顔を見合わせた。

「ズレてない? 天然ちゃんかな?」

「多分。」

 ピナが、に合わせて屈んだ。

「おはよう。 元気ね。 私は、富川(プチョン)バスケ部の尹妃奈(ユン ピナ)。 君、1年よね?」

「はい! お姉さん達、キレイですね!」

 にっこり笑ったに、おさげの少女がつられて笑った。

「もう、正直ねv 私は、李里香(リ リヒャン)。 こっちの無愛想なのが、池春香(チ チュニャン)よ。 よろしくね。」

 無愛想と紹介されたチュニャンが、時計を見て二人を急かす。

「そろそろ行こう。 アップの時間がなくなるよ。」

「じゃ、ちゃんまたね〜♪」

 チュニャンに続いて、リヒャンが手を振る。

 ピナがじっとを見つめた。

「…悪いけど、手加減はしないわよ。 選手に言っておいてね。」

「はい! 負けませんよ!」

 三人を見送って、は自分の置かれた立場に気付いた。

「ど、どうしよう…」

 再び困っていると、知っている声が聞こえてきた。

、ごめん! こっちこっち!」

 探しに来たのだろう、翠が手を振っている。

「観客凄いよ、さすがに翠も緊張する〜。」

 いつもに比べて余裕のない様子の翠。

 も緊張している。

 しかし、それ以上に、何かわくわくしているような、そんな感じだった。



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