富川バスケ部



 試合開始の笛が鳴る。

 は、まだベンチにいた。

「あ、ちゃんユニフォームもらってるよぉ。 試合出るのかな?」

「試合に集中しなさい。」

 嬉しそうに言う6番・リヒャンに、5番・チュニャンが呆れたように言った。

 いつになく、緊張した様子のメンバー。

 は、前日に佐藤コーチが言っていた事を思い出していた。

『前半は、試合に出なくていいです。 ただ、見てなさい。 どこのチームにも、弱点はあるはずですから。』

『後半、20点開いてなければ、まだ勝機はあります。 貴女のスピードで、富川を乱して下さい。』

 4番・ピナにボールが渡った途端、体育館に歓声が響いた。

『富川の4番は、よぉーく見てよ。 すっごく勉強になるからさ♪』

 確か、竜が言っていた。

 わざとであろうか、高いドリブル。

 スティールを狙う翠と、二年の柊を交わして、シュートに入る。

早い。―――――

 シュートに入るまでが、早い。

 これでは、ブロックが間に合わない。

 三年が絶妙なコンビネーションで、次々に点を加算して行く。

 ピナは、3Pもゴール下も強い。

 リヒャンとチュニャンは、ゴール下とリバウンドが強力だ。

 ガードの二年コンビも、いい動きを見せている。

 は、首を傾げた。

「弱点って……… ない…?」



back