秋山の作戦



そわそわそわ。

「……………。」

うずうずうず。

「だー、落ち着け!!」

 大祐が声を張り上げた。

「せやかて…!」

 先ほどから樋口が妙にそわそわしている。

「女子が気になるのはわかるけど、僕たちも試合が始まるんだから。 こっちに集中しないと。」

 京が優しく嗜めた。

「せやかて、京ちゃん…。 心配なもんは心配や。 大丈夫かいな?」

 樋口がボールを手で遊ばせながら、続ける。

「さっちゃん(佐藤コーチ)は、ああ言うとったけど… そんな甘い相手とちゃうやろ。 竜ちゃんも、心配なんちゃう?」

「…心配だけどぉ。」

 本日は男子のマネージャー、竜が樋口に同意する。

「行ったれや。 隣町やし、10分あれば行けるやん。」

「………だけど。」

 竜が言葉を詰まらせた。

 藤真が集合をかける。

「女子も頑張ってるはずだ。 俺たちも勝って、ベスト4になるぞ。」





「おい…」

「何かしら?」

 ただいまのスコアは、19-6。

 秋山が溜息を吐いた。

「直ってないのか、アガリ症。 一本も決まってないぞ。」

「…椛だって、まだ暴れ足りてないんじゃない?」

 前半が半分を過ぎようとしていた所。

 厳しい展開になって来た。

「マコちゃん、入れようよ。 ペース変えないと、辛くない?」

 5分を過ぎた頃には、富川はピナをベンチに下げていた。

 余力を残されてこの点差は、厳しい。

「5番と6番、あのコンビ辛いですね。 全然シュート打たせてくれない。」

 柊が愚痴をこぼす。

「…のプレイを見てみたい。 藤真がアレだけ入れ込んでるんだ、早いが、交代させよう。」

 9番の宮下が交代した。

。」

「はい。」

 秋山に呼び止められて、が首を傾げた。

「富川の 5番か6番、どっちか片方を抜いたら、パスを出せ。」

「はい!」

 試合再開。



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