エースの実力



「お待たせ☆ 大丈夫?」

 ゆっくりと、の小さな身体を起こす。

「どぉしたの?」

 涙目の小さな少女の、頭を撫でた。

「…負けたくないの。」

 唇を噛み締めるを、そっと抱き締める。

「ん、勝とうね。 だから、は交代なしだにょ☆」

 ちらっと、真琴を見る。

「真琴さん、柊ちゃんと代わってもいい?」

 にっこり笑う竜に、真琴が頷く。

「…頑張ってね。」

 竜の肩をポンと叩いて、柊がベンチに下がった。

、ボクをよく見ててね。 パス出すから。」

 竜の言葉に、何度も頷く。

「ボクの可愛いをイジメルなんて、許さないよ。」



シュパッ。

 ボールがゴールにキレイに吸い込まれた。

「あ、ありえない…」

 6番・リヒャンが、呟く。

 泉沢7番・竜は、早くも12点を決めた。

「悪いけど、もう点数は取らせないにょ〜。」

 挑発するように、4番・ピナに言う。

 ピナが眉を寄せた。

「…貴女、更科の13番ね。」

 昨年の冬の大会。

 富川は、まだ一年だった竜に、ペースを乱され完璧にやられたのだった。

「ありゃ〜、覚えててくれたの? ボク、嬉しい♪」

 あっけらかんとした口調とは反対に、すばやい動き。

 あっと言う間にボールを奪われ、竜はそのまま駆け出していた。

「甘いにゃ〜♪ ボクは、パスも出すにょ☆」

 ブロックに来た二人を交わして、スルーパス。

「打て、!」

 高くボールを放る。

シュパッ。

「竜ちゃん、やった〜!」

 今試合で初めて、フックショットが成功した。

 は嬉しそうに、竜に飛びつく。

(上手いな…。 プレイに余裕がある。)

 秋山が小さく息を吐いた。

「さ♪ じゃんじゃん行こう! 翠もまだ行けるよねぇ?」

「当ったり前!」

 翠がガッツポーズで答える。

「真琴さんも! パス出すにょ☆」

 突然話を振られて、真琴がびっくりしたように頷く。

「だ〜いじょうぶ。 ボクがパワーをあげよう♪」

 真琴の手を、ぎゅっと握る。

「これで絶対入るにょ☆ 僕を信じて。」

 残り、2分。

 スコアは、39-36 。



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