勝敗



「入れ!!」

 秋山が叫んだ。

 真琴が、きつく目を瞑る。

シュパッ。

 その音が、必要以上に大きく聞こえた。

「入った〜っ!!」

 翠が、飛び上がる。

 真琴は、自分の掌を見つめていた。

「は、入った…」

 驚いたように、呟く。

「フリーだったんだ。 入れてなかったら、殺してたぞ。」

 毒づきながらも、秋山が嬉しそうに細く笑った。

「真琴さんにはね、自信が足りなかったんだにょ。 でも、もう大丈夫だね♪」

「ねー♪」

 竜の言葉に、がつられて答える。

「さーて、あと1ゴール。 決めて、勝ってボスに報告に行くのだ〜!」

 富川ボール。

 竜を警戒して、中々パスを回せない。

トン。

「え?」

 ボールを弾かれて、驚き動けずにいる5番・チュニャンを素早く抜く。

「さっすが! そのまま、いっけ〜!」

 ピナがブロックに入る。

「翠ちゃん!」

 翠にパス。

「竜ちゃん!」

 竜にパス。

「シュート! ………と見せかけて、!」

 にパス。

「入れるんだにょ☆」

 フックショット。

シュパッ。

ピィー。

 試合終了の笛が鳴った。

「「「やったーっ!!!」」」

 39-41 。

 泉沢の逆転勝利である。

 悔しそうに唇を噛み締める富川の選手。

「言ったにょ。 もう、点数は取らせないって。」

 竜が首を竦めた。

 ピナが、小さく息を吐く。

「………やられたわ。 がんばりなさいよ。」

ちゃん!」

 翠と話しているに、背後からリヒャンが飛び付く。

「可愛いだけじゃないんだね。 きっともっと上手くなるよ。 がんばってね。」

「はい! ありがとうございました!」

 にっこり笑って、頷く。

「おい…」

 秋山の声に、振り返る。

 秋山が息を吐いた。

「泣くのは、優勝してからにしろ。」

「…泣いてないわよ。」

 真琴が首を振る。

「信じられないわ… ベスト4よ。」

 秋山が、真琴の頭をポンと叩いた。

「ここまで来たら、優勝だ。」

「ん、頑張らないと…。」

 それぞれ、選手達と握手をして更衣室に向う。

「男子、大丈夫かな?」

 翠の声に、竜が答える。

「前半、一点差で食いついてたにょ。 もう、試合終わったんじゃないかな?」

「男子も勝てれば、ベスト4なのよね。」

 真琴の呟きに、場がシーンとなる。

「まぁ、武石中相手に一点差は、褒めてやりたい所だな。」

 ベスト4。

 その言葉が、重い。

♪〜。

「ほい、もしもし☆ 京? 女子勝ったにょ☆ 男子は?」

 竜の携帯電話が鳴った。

 全員が聞き耳を立てた。

「え?」

 竜が目を丸くする。

「負けた… 一点差? …え、何?」

 竜は、耳を疑った。

「炎がいなくなった?」



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