気持ちの切り替え



「ちーっす!」

パーン!

 突然響いた音に、は目をぱちくりさせた。

「にゃはっ☆ もぉちょっと、リアクションが欲しかったにゃ。」

 首を傾げるに、竜が首を竦めた。

 クラッカーを鳴らしたのは、京。

 紙ふぶきやリボンなどが、の髪や肩に付いている。

「竜は、悲鳴を上げて飛び上がったもんね。」

「いきなりだったぢゃん! びっくりするにょ!」

 揶揄る京に、竜が言った。

「昨日の試合は、よくやった。 これで、ベスト4だ。」

 藤真が声をかける。

 は、わずかに肩を落とした。

「竜ちゃんのおかげです。 全然、歯が立たなかった…」

 藤真が首を振る。

「お前はよくやったよ。 十分だ。」

「でも…」

 小さな肩を、ポンと叩いた。

 が大きな瞳で、藤真を見上げる。

「短い間だったけど、よく頑張ってくれた。 そして、これからも、一緒に頑張って行こう。」

「はい。」

 微笑む藤真に、が頷く。

… いいにゃ〜………」

 竜が指をくわえて、その様子を眺めてる。

「何や、イヤらしい。 ちゃんに、ひっつかんでや。」

 いつもと変わらない声にわずかに安心して、藤真が視線を移す。

「ちっす。」

 気持ち、緊張する。

 昨日の試合、よくやったとは言え、ショックを受けた事に変わりはない。

 藤真は、ゆっくり振り返った。

 藤真の言葉を遮るように、樋口が首を振る。

「大丈夫や、気持ちは切り替えて来てん。」

 樋口が続ける。

「もう、二度と負けん。 あんな思いは一回で十分や。」

 強い思いを秘めた瞳。

 藤真は細く笑った。

「当たり前だ。」



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