勝敗 -更科-



ピィー。

 笛が鳴った。

 直後、ボールがゴールネットをすり抜けた。

 シュートを打ったのは、真琴。

 スリーポイントだ。

 審判が、両手を大きく振る。

「ノーカウント!!」

ワアァ。

 会場が沸いた。

「ええやん、更科相手に大健闘!! 三点くれ!! そんで奇跡を起こすんやぁ〜、ちゃん!!!」

 樋口がコートに向って叫ぶ。

「今のがカウントされれば、同点か…。」

 大祐の声に、藤真が眉を寄せる。

 同点なら、休憩を挟んで延長戦。

「…泉沢(うち)にそんな体力残ってないさ。」

48 - 45

 整列する女子部員を見つめた。

「だが、大健闘だ。」

 両肩で息をしている、一際小さくて目立っている少女。

(…よくやった。)

 気のせいだろうか、その肩が震えている様に見える。

(今大会がデビュー戦にしては上出来だ。 俺が教えた以上の事を、お前はやった。)

 俯いていた少女が、ゆっくりと顔を上げる。

(だから…)

 藤真が強く拳を握る。

 少女が口を固く閉じて、目の前の更科の選手達を見上げた。

(だから泣くな。)

 勝って欲しかった。

 ここまで頑張ったのだ。

 なんとしても、勝たせてやりたかった。

(泣くな。 お前には、まだ先がある。)

 じぃっとコートの一点を見つめる藤真。

 その藤真を一度見て、樋口がコートに視線を戻した。

「…さすがに今日は練習せんやろ? ゆっくり休ませたってや。 ごっつ頑張ったやないか。」

 樋口が続ける。

「…同じやな。」

 京と大祐が首を傾げた。

「男子も女子も、目標が同じになったな。」

 自信たっぷりの、いつものナマイキな表情で三人を見上げる。

「冬は"優勝"や!」

 泉沢学院 中等科 女子バスケ部。 ベスト 4 の快挙。



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