7月10日 晴れ。 気温は午後二時を回った現在、33℃。 この日。 佐藤コーチはいつに増して上機嫌だった。 部員達が練習を始めているであろう、体育館のドアを開ける。 「「「ちーっす!!」」」 「はい、お疲れ様です。」 練習を中断して、藤真が集合をかける。 佐藤コーチがにこにこして言った。 「皆さん、期末試験お疲れ様でした。」 "期末試験"。 大祐と真琴が顔を見合わせて首を竦めた。 今朝から掲示板に張り出された、学年及び学校上位20名の名前と点数。 佐藤コーチが樋口の頭を撫でた。 「一年の社会、難しくしたんですけど頑張りましたね〜。」 「ヤメや! すぐガキみたいに頭撫でよる…」 その手を振り払った樋口の側で。 「翠、社会死んだ…」 翠にそう呟かれて、真琴が苦笑った。
「この化け物集団め…」 大祐がぼそっと吐き捨てた。 「今回の試験はレベルが高かったと、教師一同喜んでますよ。」 樋口が踏ん反り返る。 「オレはやる言うたらやるで。」 「バスケ部が上位5位までを占めるのは、学校始まって以来の出来事。 そこで。」 ゆっくりと、部員達を見回す。 「野宮(のみや)理事長から、バスケ部にボーナスを頂きました。 今年は、長野にでも合宿に行きましょうか。」 「ほんま!? さすがノンちゃん、太っ腹や! 今度茶菓子持って、理事長室遊びに行かなあかんな。」 「友達?」 竜が訊ねると。 「マブダチや。」 樋口が偉そうに答えた。 樋口がにぃっこり笑って藤真を見上げた。 「いつでもええから、三日な!」 「…わかっている。」 藤真が小さく息を吐いた。 「キャプテンも惜しかったですね。 炎のヤツ、本当に満点なんて。」 京はこう言うが、大祐は内心思った。 (497点…。 遊びだと思っていたけど、けっこう本気だったんだな、健司。) |