夏祭り



「あー! かき氷や!」

「なにっ!? 突撃ーっ☆」

 樋口の声に、竜が一緒に走る。

「ったく、ガキだなー。」

 大祐が苦笑う。

「アニキ。 翠、メロン。」

 翠が大祐の裾を引いた。

 何か。

 めずらしく、平和な感じだ。

(この所練習続きだったから、たまにはいいか。)

 藤真がこんなことを考えていると。

「ボス! 射的で勝負や!!」

 かき氷を片手に、お面を頭に被って、浴衣の帯にうちわを差した格好で、樋口が藤真を指差した。

「すっかり夏を満喫してるね。」

 京が小さく笑った。

「当たり前や! 夏祭りは浴衣。 これ基本やろ。 なー☆」

 樋口が振り返った先には。

「ん、ん。 すごい可愛い。」

 竜も頷く。

「な、那美さんが着ていけって言うから… /// 」

 恥かしそうに、が俯いた。

 白の浴衣に、赤やピンクで金魚の柄が入っている。

 実に、夏らしい浴衣である。

 焼きそばやたこ焼き、かき氷、射的に輪投げ、金魚すくい…

 十分にお祭りを満喫したであろう一行は、神社の社の裏の辺りに腰掛けて一休みしていた。

ちゃん、ちゃん。」

 樋口が、小さい声で手招きする。

「なーに?」

 首を傾げて、が樋口の方へ歩いて行く。

「コレやるわ。」

 誰にも聞こえないように、小さい声で囁く。

「オレな、赤色好きやねん。 きっと似合う思うたし。」

 赤い石の付いた、おもちゃの指輪。

「露店で買ったんや。 オレ、ちゃんに色んな物貰ってるから。」

 少し照れたように言う樋口に、が首を傾げる。

「何もあげてないよ?」

 それには答えず、にっこりと笑う。

「もうすぐやで。」

「何が??」

 がもう一度首を傾げたとほぼ同時に。

「ほら!」

ヒュー。

パーン。

 夜空に花火が上がった。

「わぁ…」

「すごいやろ。 ここ、よく見えるんやで。」

 得意になったように、樋口が笑った。

 が頷く。

「ん。 そう笑っとった方がええ。」

と。

「お前、いい場所知ってんな。」

 大祐の声に、樋口はメンバーの輪の中へ戻った。

「やろ! さっちゃんが教えてくれたんや。」

「キレイね。」

 真琴の声で、皆が空を見上げた。

 打ち上がる、色とりどりの花火。

 夏を感じた日だった。



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