大阪 - 食後 -



「やっぱり大阪はええな〜!」

 樋口が元気に伸びをする。

 話を弾ませながらの食事。

 大満足に楽しかった。

 神奈川へ移って、4ヶ月程。

 積もる話は山のようにあった。

 自分よりも背が高い、口の悪い同級生がいる事。

 試合で、武石中に負けてしまった事。

 泉沢のキャプテンをはじめ、色んな人に身体の事を突っ込まれる事。

 ほとんどいじめに近い、練習量を課せられている事。

 そして、鬼キャプテンが、女生徒に異様に人気がある事が気に食わない事。(笑)

 など。

 一通り話を終えた樋口は、満腹も手伝って気分が良かった。

「俺等がいなくても、しっかりやっとるんやな〜。」

 岸本が樋口の頭を撫でた。

「やめ。 何でみんなオレの頭を撫でるんや?」

「丁度いい高さやから。」

 その答えに、樋口は少し岸本を睨む。

「小っこくてめんこい顔しとる炎が睨んでも、ちっとも怖ないわ。」

 樋口で遊ぶ岸本。

 その二人に少し送れて、と南が歩いていた。

「どや? 美味かったやろ? 地元では有名な店なんや。」

「はい。 ご馳走さまでした。」

 にっこり笑うに、南が前を歩く二人を見ながら言った。

「気にしとる?」

 何のことだかわからず、首を傾げる

 南はに視線を移して続けた。

「炎や。 藤真言うたか? キャプテン。 文句ばっかり言うてたやろ。」

「…何で嫌いなのかな?」

 少し俯いて、肩を落とす。

 は、樋口も藤真も同じくらい大好きだ。

「ちゃうて。 その逆や。」

 少し呆れたように笑って、南が続ける。

「認めてんのや、そいつの事。 で、自分がまだ叶わないっちゅう事も、知っとる。 それが悔しゅうて、ああ言うとるんや。」

優しく笑って、を見据える。

「背伸びして強がっとるけど、アイツもまだまだガキやからな。」

 じっと。

 少し前を歩く樋口を見る。

 岸本にからかわれながら、軽くどついたりどつかれたり、楽しそうに笑っていた。

 何だか少し、嬉しい。

「どうした?」

 南が首を傾げた。

「樋口くんの事、ちゃんとわかってる人がいるんだなーって。」

 はにっこりと笑った。

「…お前、エエ子やな。」

 くしゃっと、の髪を撫でる。

「あーーー!!」

 すごい速さで樋口が駆け寄って来た。

「あかん! 家の人に無理言うて大阪に連れて来たんや! 手出したらあかん、オレ本気で怒るで!」

 を背後に庇い、南に食ってかかる。

「心配せんでも、出さん。」

 数年後になれば、どうなるかわからないが。

 それはあえて口に出さない。

「南! あそこ行こうや! 二人に見せてやりたいわ!」

 岸本が思い付いたように言う。

「俺はそのつもりやってん。 二人、付いて来や。」



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