大阪 - 挨拶 -



結局。

 そのままバスケに没頭してしまい、一日それで終わってしまった。

「…大阪に来てまで、わざわざ休みの日にバスケ。 オレバスケバカかも知らん。」

 時刻は、朝八時半を過ぎた頃。

 二人は予約の新幹線に乗るため、ホームにいた。

「楽しかったね。」

 がにっこり笑った。

「んー、楽しかったな。」

 つられて笑う。

「炎!」

 名前を呼ばれて振り返った。

「南ちゃん! 岸もっちゃん! 来てくれたん?」

「来てやらんと、いじける思うたからな。」

 岸本の小バカにした声に、少し眉を寄せる。

 飛び掛ろうとした樋口に。

「止め。 そんな時間ないやろ。」

 もうすぐ、新幹線が発車する時刻だ。

「挨拶がまだやったからな。」

 南が、拳を出した。

「おう。」

 樋口がそれに、自分の拳をコツンと当てる。

 続いて、岸本にも同じ事をした。

 が首を傾げる。

「ああ、コレな。」

 南が続けた。

「俺らの挨拶や。 "がんばれ"とか"元気でな"とか"またな"とか、そう言う気持ちが全部詰まってんねん。」

「コイツが神奈川行く時も、このホームでやったんや。」

 岸本が補足説明をした。

 はしばらく考えて。

 スっと、自分の拳を出した。

 二人は少し驚いたようだが、やがて笑顔で同じように挨拶をした。

「エエ子やな。」

「やろ。」

 南の声に、樋口が頷く。

「…本気なら、しっかり守らなあかんで。」

「もちろんや。」

 新幹線が発車した。

 段々速度を上げて走る新幹線の窓越しに見る、大阪の町並み。

 楽しい小旅行だった。



back