愛知 - 従兄弟 -



ピンポーン。

 まだ、お昼前。

 こんな時間に来客などめずらしいと思いながら、諸星大はドアを開けた。

「はいはい、どちら様…」

 一瞬、時が止まった。

「よ☆」

「炎!」

 諸星が嬉しそうに、樋口をぎゅーっと抱き締める。

「久しぶりだなー! 春休み以来か!」

「ちょっ、止め! 男に抱きつかれる趣味はないんや!」

 嫌そうに暴れる樋口をしばらくして解放する。

「またいきなり来たな。 オレ、部活休みでよかった。」

 にこにこしている諸星に、樋口が言う。

「大ちゃんのママには連絡してん。 大ちゃんが休みなんは知ってわ。 内緒にしてもらってたんや。」

 ナマイキそうに笑う樋口の頭を、ぐしゃぐしゃと撫でる。

「夕方には帰るねんけど、それまでお邪魔するわ。」

 樋口が振り返って、諸星はやっとの存在に気付いた。

「うわー! 炎に先越されたー!」

 突然叫ばれて、は目を丸くしてきょとんとした。

「(まだ)ちゃうわ。 クラスメイトで部活も同じの…」

です。 始めまして。」

 がちょこんと頭を下げる。

「…可愛い。」

 ぼそっと呟いた諸星に、樋口の右ストレートが炸裂した。

 痛そうに蹲る諸星を他所に、樋口は続ける。

ちゃん、この変なんが、オレの従兄弟。 諸星大言うねん。 愛和学院・中等科。 今三年や。」

「始めまして、大ちゃんって呼んで。」

 にこにこしながら、諸星が続ける。

「上がりなよ。 確かケーキがあったはず…」

 ぶつぶつ呟きながら台所へ向う諸星を指差して。

「な。 面白いやろ? 一人っ子やから、年下が遊びに来ると、ごっつ喜ぶねん。」

 悪戯っ子のように、樋口が笑った。



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