早朝



「あれ?」

 早朝。

 毎朝の日課、ジョギングをしている、二年の二葉京が首を傾げた。

(あれって…)

 見間違える訳はない。

ちゃん?」

 突然名前を呼ばれて、が振り返った。

「京ちゃん先輩。」

 こんな時間にこんな場所で、知り合いに会うなんて思っていなかった。

 は、少し目を丸くした。

「驚いたなー。 毎日、朝練を?」

 が頷く。

「走り込みは、水曜日と、土曜日に。」

 並んで走っても。

(小さいな。)

 多少背が伸びたとは言え、樋口ももまだ小さい。

(こんな小さいのに…)

 一体どこに、藤真の練習をこなす力があるのだろう。

 ふと。

「一人で?」

 京の言葉に、は小さく首を振った。

「いつもは、樋口くんと… でも、最近ちょっと具合が悪いみたいだし。」

「この前学校休んだし、心配だね。」

 は小さく頷いた。

「でも、心配すると、樋口くん、がんばっちゃうから。 無理させたくないんです。」

「炎は意地っ張りだから。 でも、二人ともよく頑張ってるね。」

 京の声に、今度は力強く頷く。

「約束したんです。 冬は、優勝!」

 花のように笑う。

 京はつられて笑って、の頭を撫でた。

「いい子だね。 ちゃんも炎も。」

 この二人なら。

 きっと夢を叶えられるだろう。

 ただひたむきに、一生懸命に頑張っているのだから。



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