台風 4



  どさどさ。

 床に散らばった週刊誌。

 その側では、藤真がしっかりとを抱きかかえていた。

 小さなの手が、強く、藤真の服の裾を握る。

 突然の事に驚いたのだろう。

 少女はかすかに震えていた。

「大丈夫か?」

 藤真の言葉が完全に発せられる前に。

ピカ。

 窓の外に、閃光が走った。

「きゃあ!」

 が悲鳴を上げる。

 わずかに遅れて、ごろごろと言う音が聞こえた。

、大丈夫だ。 ただの、雷…」

 藤真の声。

 は何も言わず、きつく目を瞑って耳を塞いでいた。

ピカ。

「きゃああ!!」

 小さな体が、震えている。

…」

 は何も言わず、首を振った。

 いつもは元気なが、こんな姿を見せるなんて意外だった。

 藤真は少し驚いていた。

 どんなに元気で頑張っていても、はただの中学一年生の女の子なのだと。

 知っていたはずなのに、改めてそう思わされた。

 何を言ってもただ震えているなんて、いつもの姿からは想像できない。

 藤真は、優しくを抱きしめた。

 かける言葉に迷ったのか、少し間があった。

「…、ちゃん… 大丈夫。 ただの雷だ。 怖くない。」

 を安心させてやるためか、優しく抱き締める。

 藤真自身気付いているのだろうか?

 その声は、今までの誰に掛ける声よりも優しい物だった。

 しばらくそうして髪を撫でてやると、落ち着いたのか、の震えは止まった。

 そこからまたしばらくして、明かりが点いた。

 藤真がほっと息を吐いた。

 停電も直ったし、雷の音も聞こえない。

 も、もう大丈夫だろう。

ちゃん…?」

 答える声はない。

 藤真の温もりに安心したのか、は眠ってしまっていた。

 この場でじっとしている訳にも行かない。

ちゃん。」

 軽く揺すっても、は眉一つ動かさなかった。

 藤真は一度、息を吐いた。

 小さな身体を抱き上げる。

 知っていたことだが、改めてがどんなに小さいか、気付かされた。

 自分のシャツを、強く握る小さな手。

 この小さな少女に無理をさせていると思うと、少し、胸が詰まった。



back