小指 2



!」

 が何か言おうとした時、突然名前を呼ばれた。

 自分をそう呼ぶ人物は一人しかいない。

「宗ちゃん。」

 幼なじみである。

 が振り返った。

「今帰り?」

 神はにこりと笑った。

「樋口君も。 久しぶりだね。」

「おう。 元気か、ジンジン?」

 樋口が自分を見上げてそう言ったので、神は目をぱちくりさせた。

「ジンジン?」

 首を傾げる神に、樋口が頷く。

「神宗一郎やろ? せやから、ジンジンや。」

 ふと、が首を傾げた。

「宗ちゃん、後ろの人誰?」

 神が振り返る。

「最近バスケ部に入部して来たんだよ。 福田吉兆。 俺と同い年。」

「始めまして。 宗ちゃんの幼なじみの、です。」

「樋口炎。 泉沢の12番や。」

 頭を下げるに、樋口が続いた。

 福田は、樋口を見て目を細めた。

「俺の方が一個年上なんだから、敬語使えよ。」

 この反応を予想していただろう神は、苦笑を浮かべる。

「細かい事気にしたらあかんで、フッキー。 男は広い心を持たなあかん。」

「フッキー??」

 首を傾げる福田に、樋口が頷く。

くだ っちょうやろ? フッキーや。」

 福田は、じぃっと樋口を見つめて頷いた。

「フッキー… フッキーか…。」

 神に視線を移す。

「俺、明日からフッキーな。」

(気に入ったのか?)

 頷く神に、満足そうな表情を浮かべて、背を向ける。

「じゃぁな、ジンジン。」

(…それも気に入ったのか。)

 福田の背をしばらく見送っていて、神が二人を見比べた。

「いつもを送ってくれて、ありがとう。」

 樋口ににっこりと笑いかける。

「今日は俺とで、樋口君を家の前まで送ろうか?」

「ん。」

 が笑顔で即答する。

 不本意だが。

 話が途中で遮られる形になってしまい、樋口は小さく溜息を吐いた。



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