先にを送って、藤真と樋口は岐路に付いた。 藤真は気持ち緊張していた。 樋口と二人になるのは、あの啖呵をきられた日以来だ。 「…心配せんでも、今日は何も言わん。」 藤真の気持ちを悟ったのか、樋口が口を利く。 「ナマイキ言うて悪かったわ。 ちぃとばかしガキやったなって、反省してるんやで。」 「…いや。」 樋口が、じぃっと藤真を見上げる。 少し、胸が痛んだ。 「どうした?」 樋口が、泣くかと思った。 そんな表情をしていたので、思わず訊ねてしまった。 「ん…」 曖昧に頷いて、首を竦める。 「やっぱ止めとくわ。」 小さく首を振った。 「気になるだろ。 話せよ。」 肘で小突く。 樋口はぽりぽりと頬をかいて、はにかみながら口を利いた。 「姫の事なんやけど…」 「どうかしたのか?」 少し眉を寄せる藤真に、そんなんじゃないと首を振る。 「姫って、キレイで小さいやん? せやから、ちゃんと捕まえな… どっか行ってしもうていなくなりそうで… 心配なんよ。」 どう言えばいいのか、樋口自身もわかっていないのだろう。 言葉の整理が出来ていない。 「何で、俺にそんな話を?」 藤真が訊ねる。 樋口はまっすぐに藤真を見上げた。 「ボスは、きっとオレと同じ気持ちやから。」 樋口は続けた。 「せやからナマイキも言うたし、反抗もしたけど… それやったらあかんねん。」 少し、首を竦めた。 じぃっと、藤真を見据える。 「…姫の側におってな。」 突然の言葉に、眉を寄せた。 藤真が何か言うより先に、樋口が続ける。 「もちろん、オレは姫の側におるで。 ずっと一緒や言うたもん。 せやけど…」 風が吹いた。 樋口が何と言ったのか、聞き取れなかった。 「悪い、今何て…」 藤真の声を遮って、首を振る。 「何でもないわ! 忘れてくれ!」 何か恥かしい事でも言ったのか。 樋口の顔が赤かった。 「じゃ、お疲れさん! 土曜の準決勝がんばろうな!」 元気に手を振る。 「ああ。 目標は…」 「「 優勝! 」」 声が揃った。 一人踵を返して、藤真は頷いた。 やっぱり、と樋口はどこか似ている。 いつも何かしら、二人に励まされている。 そんな気がした。 |