疲労



バタバタバタ。

 三年の廊下。

 慌しい、二つの足音。

「ちょ… 待てっ!」

 聞き覚えのある声の直後に、4組のドアが勢いよく開いた。

「藤真健司、出て来いや〜!!」

 突然、大声で名を呼ばれて、藤真は飲んでいた豆乳を吹き出した。

「きったねぇ!」

 大祐が叫んだが、そちらは綺麗に無視された。

「な、んだ? 二人して…?」

 驚く藤真に構わず、樋口は三年の教室に、ズカズカを入る。

「ちょっと、待て、チビ!」

 翠が必死に止めているが、樋口の剣幕は止まらない。

「お前、豆乳なんか飲んでる場合ちゃうやろ! 保健室に、土下座しに行けや!」

 捲くし立てる樋口に、首を傾げる。

「もっと、わかり易く話してくれる?」

 真琴の声に、翠が頷いた。

「…がね、倒れちゃったんだ。 朝から、顔真っ青で、ついさっき………」

 翠の声に、藤真が驚いて目を見開いた。

 朝、と会った。

 あの時は、少女はいつもと同じように、笑っていた。

「保健室だな?」

 頷いた翠に、背を向けて歩き出す。

 知らずの内に、足が早まる。

 やはり、ガタが来ていた。

 少女の体は、限界を超えていたんだ。

 一言も、愚痴をこぼさなかった少女。

 強がっていた事に気付けずに、無理をさせ過ぎてしまった。

 仕方ないと割り切っていても、やはり自分自身に腹が立った。



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