前半戦



 夏の大会を制したのは横田中だった。

 三井寿率いる武石中は、決勝で横田中に敗れていた。

 試合開始。

 女子部員が見守る中、藤真は落ち着いた状態で試合に臨んでいた。

 夏の大会では、藤真が予想した以上の事をやってくれた樋口。

 今大会でも、きっと、試合の鍵を握るのは樋口であろうと、藤真は大祐に言っていた。

 横田中ボール。

バチッ。

 藤真がボールを奪う。

「ボス、かっくいぃ〜!」

 竜が声援を飛ばした。

「樋口!」

 既に駆け出していた12番、樋口にボールを回す。

 相手のセンターを交わして、フックショットがキレイに決まった。

 まずは先制点。

「やった!」

 真琴と翠が手を合わせた。

 刻々と、時間は流れる。

 見る限り、泉沢がやや優勢。

 一番、目立っているのは。

「…泉沢の12番。 樋口炎、1年。 夏の試合も見てたけど、アイツまた上手くなったな。」

「ああ。 まだ小さいけど背も伸びたし。 それになんて言ったって、チームを引っ張る勢いがある。」

「藤真と息も合ってるみたいだしな。 こりゃ、泉沢優勝するんじゃないか?」

 観客達の評価の声に、はにっこり笑った。

 樋口が褒められると、自分の事のように嬉しい。

「炎くん、がんばれー!」

 樋口が観客席を振り返り、人差し指でを指差した。

「さ! 一本行くで!」

 この一年間。

 入部したての頃は、特にポジションが決まっていた訳ではないが、ゴールを決めるのが好きだった。

 試合の流れを握る事に楽しみを覚えたのは、きっと、PG 藤真の影響だろう。

「ボスが引退したら、PG も悪くないなぁ。」

 一度、そんな事をぼやいていた。

「走れるスコアラー、樋口炎。 ココからが本領発揮や。」

 誰よりも小さい樋口は、コート上で誰よりも早かった。

 樋口は完全に、ゲームの中心にいた。



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