再始動



「!!」

 コートにいた、いや…

 会場にいる全ての視線が、一点に集中した。

………」

 辛うじて、翠が声にする。

 小さな少女。

 その頭に巻かれた包帯が痛々しい。

「…出るのか?」

 秋山が眉を寄せた。

すぅ。

 は大きく息を吸った。

「よろしくお願いします!!」

 大声でそう言って、ぺこりと頭を下げる。

 きょとんとしているチームメイトの顔を見回す。

「心配かけてごめんなさい。 もう大丈夫です。」

 小さくガッツポーズ。

 仲間と同じくらい呆気に取られている、更科中の方を振り返る。

「12番・、ココからが本番です!」

 ビシッと指を差され、香咲が細く笑った。

 スコアボードをちらっと見る。

 残り、10分。

 33 - 44 。

 得点差は11点と、まだまだ追い付ける範囲である。

 しかし。

 がコートを去る前までは、29 - 20 だったのだ。

 試合時間にして、わずか6分半。

 その間に24点も取られている。

 更科本領発揮と言ったところだろうか。

 泉沢の選手は、既に戦意喪失状態だった。

(無理だよ… 更科に勝とうなんて、やっぱりうちには………)

「ぶっさいくやなぁ、シケタ面して!」

 懐かしい声。

 翠は顔を上げた。

「なっ…」

「樋口くん!」

「炎…!」

 いつもと変わらぬナマイキそうな笑みを浮かべて、樋口は口を利いた。

「試合はまだ終わってないんや! 時間もある! 諦めるには少し早いとちゃうか!」

 翠を指差す。

「だ、誰がブサイクだ、このチビ! 偉そうに…」

「おう、元気やないか。」

 翠は言葉を飲み込んだ。

「お前はそうやって、顔を上げて大口叩いてればええんや。」

 憎まれ口を叩かれているのに、その声は少し優しくて。

「…バカやろぅ……… 来るのが遅いんだよ。 …心配かけやがって………」

 涙が零れた。

 黛と秋山… 竜へと視線を移す。

(他はまだ気持ちが死んでないな…)

 藤真が小さく息を吐いた。

!」

 じっとを見る。

 は振り返って首を傾げた。

「お前がいない間に24点取られているんだ! お前一人で、24点を取り返せ!!」

 館内に声が響いた。

 香咲が眉を寄せる。

「…ふざけた事を… バスケットは子供の遊びじゃないのよ。」

 藤真は続けた。

「出来ないとは言わせないぞ! 一年間、誰が見て来たと思ってるんだ!」

 は元気に頷いた。

「がんばります!」

 がコートへ戻った。

「泉沢学院 中等科・女子バスケ部! 目標は…」

「「「「「 優勝!! 」」」」」

 5人の、声が揃った。


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