会場全体の時が止まった。 「うわぁ、ー!!」 翠がに跳びつく。 61 - 60 。 ついに、逆転だ。 「よっしゃぁ! 逆転や!!」 樋口が飛び跳ねた。 「まだ!」 が声を上げる。 竜が続く。 「試合は終わってない! 最後まで、どうなるかわからないから…」 「その通りよ。」 香咲が駆けた。 「! 止めろ!!」 藤真が叫んだ。 更科のカウンター。 完璧に反応が一歩遅れた。 もう間に合わない。 香咲澪が決めた。 更科の応援席から大声援が上がる。 残り30秒を切った。 61 - 62 。 早い。 更科相手に、浮かれている場合なんてなかった。 泉沢のスローイン。 おそらく、最後のチャンスになるだろう。 翠が黛に、ボールを回す。 バチィッ。 弾かれた。 「止めろ!」 ボールは奪われたが、更科の速攻は止めた。 残り20秒。 ボールを持っているのは、香咲。 (このままキープして、更科の勝ちよ。) がまっすぐ香咲を見据えた。 「負けない。」 が唇を噛み締めた。 「あなたは泉沢がワンマンチームだって言った。」 続ける。 「そんな人には、絶対負けない!」 「…どうするって言うの?」 「チームとしての実力は更科が上だって、あなたは言った。 でも、そうは思わない。」 この言葉に、眉を寄せる。 残り14秒。 「あなたは心からチームメイトを信じていない。 だから、全部自分でやろうとするの。」 の言葉は、香咲の胸に刺さった。 「私はこのチームが大好きで、みんなを信じてる! だから、あなたには負けたくない!」 残り7秒。 ト。 「え?」 後ろからボールを弾かれた。 竜だった。 (そんな、立っているのがやっとのはずよ…) 零れたボールを、が取った。 (この子は…! 走らせちゃいけない………) 香咲が振り返ると同時に、は駆け出した。 完全に、フリーだった。 残り4秒。 はゴールを見上げた。 高く、跳んだ。 昔、公園で。 そして、入部テスト時に、同じ光景を見た。 レイアップシュート。 このシュートだ。――――― このシュートから、藤真と、そして樋口の夢が始まったと言っても過言ではない。 試合終了のブザーが鳴った。 63 - 62 。 泉沢女子バスケ部、逆転。 初・優勝。 |