3月3日。――― 3年間学んだこの学校を、私は卒業します。 卒業式 〜海南〜 3年間。 言葉で言うのは簡単だけど、いろいろな事があったよね。 「あ、牧ちゃん!」 女の子達に囲まれて泣きつかれて困っているのが、3年間私がマネージャーをしていたバスケ部のキャプテン・牧 紳一君。 インターハイで準優勝出来たのも、彼がキャプテンとして皆を引っ張っていたから。 牧ちゃんと目が合った。 助けてくれと、全身で訴えている。 私は細く笑った。 後輩達が呼んでいるからと、牧ちゃんを連れ出す。 「…すまん、助かった。」 大きく溜息を吐く牧ちゃん。 「ううん。 人気者は大変だね。 あ、ボタンが一個もない。(笑)」 私はそう言って辺りを見回した。 「宗くんと、信くん… いないかな〜?」 バスケ部の後輩である。 特に、一年の清田信長には、自分でも驚くほど懐かれていた。 牧ちゃんの大きな手が、優しく私の頭を撫でる。 その笑顔に少しどきっとして、顔が熱くなった。 「…すぐ赤くなるな、は。」 牧ちゃんが笑った。 「ど〜せ、3年間慣れなかったわよ。」 私達の足は、無意識に体育館に向かっていた。 3年間、一番長く時間を過ごした場所。 皆と練習した、思い出の詰まった場所。 そこには既に先客がいた。 「宗くん、信くん?」 その声で振り返って笑顔をくれるのが、2年の得点王・神 宗一郎くん。 「牧さん、さん… 卒業おめでとうございます。」 宗くんは気配りが凄い上手で、私は何かあると彼を頼っていた。 「ありがとう、宗くん。」 「神、清田… が会いたがっていたぞ。 どうしてこんな所にいるんだ?」 牧ちゃんが宗くんに聞いた。 宗くんは苦笑って、背を向けたままの信くんをちらっと見た。 「信くん…?」 私は心配で声をかけた。 一年の ゴールデンルーキー(自称)・清田信長くん。 スタメン唯一の一年である彼は、先輩達に気を使い、多少具合が悪くても無理をしてしまう。 マネージャーの私が、何かにこじつけていつも休ませていたのだ。 「信くん、どこか具合でも悪いの?」 ぽんと背中を叩くと、信くんは突然振り返るなり、私を抱きすくめた。 びっくりしないよ。 一年間、もっと他にいろいろと驚かされたもんね。 「信くん〜、どうしたの?」 慣れた手付きで頭を撫でる。 一年経って、少し背が伸びたみたいだね。 ますます、顔が遠いよ。 「清田、が困ってるぞ。」 牧ちゃん… 別に困ってはないけど。 信くんは牧ちゃんにも抱き付いた。 私と牧ちゃんは、揃って首を傾げた。 「すみません、ノブがグズッて… 二人がココに来てくれてよかったです。」 宗くん、グズッたって? 牧ちゃんが溜息を吐いた。 「先輩になるんだろ、しっかりしろ。」 優しく言って、信くんの頭を撫でる。 信くんは顔を上げて牧ちゃんを見上げた。 きっと今まで我慢していたんだね。 牧ちゃんの顔を見て、信くんは泣き出しちゃった。 「牧さぁ〜ん、卒業しないで下さい… 俺、牧さんいないの嫌なんすよ〜!」 子供みたいに泣きじゃくっちゃって…。 「さん〜、 いなくなったら寂しいっすよぉ…」 私と牧ちゃんは、目を合わせてお互いに苦笑った。 「清田…卒業しても、ココと同じ大学に通うんだから、すぐ会えるだろ。」 「そうよ。 バスケ部にも、遊びに行くから。」 涙でぐしゃぐしゃになった顔で、信くんが私を見た。 最後まで手がかかって… 本当に、しょうがないんだから。 「清田、そんな事で泣くな! そんな甘い考えをしている奴に、レギュラーは勤まらんぞ!」 突然怒鳴られて、信くんがビクッと怯えた。 牧ちゃんは優しく笑って、信くんの頭を撫でた。 「しっかりしろ。 来年は、優勝するんだろ?」 起こる時はしっかり怒って、その後で優しくフォローする。 そんな牧ちゃんだから、部員皆に慕われてたんだよね。 信くんは袖で涙を拭った。 「…ハイ! 優勝します!」 宗くんが牧ちゃんに頭を下げる。 「すみません、こんな日にまで手を焼かせちゃって。」 牧ちゃんは宗くんの頭も撫でた。 「バスケ部はお前に任せるぞ、神。」 宗くんは笑顔で頷いた。 「はい。 心配しないで下さい。」 牧ちゃんって、やっぱり凄いな…。 そんな事を考えていると、宗くんと信くんが私に近寄ってきた。 「何? どうかした?」 首を傾げる私に、どこに隠し持っていたのか、花束が差し出される。 「コレ、お世話になったお礼です。 俺とノブから。」 宗くん、不意打ち禁止。 「さんは、特別世話になったから…お礼っす。」 信くん… 嬉しいんだけど。 「だって、牧さんに花なんて似合わないでしょう。」 宗くん、牧ちゃんが苦笑ってるよ。 「…ありがとう。」 それ以上何も言葉が出なかった。 花束を受け取った私に、今度は。 chu v ――――― 左右から、ほっぺにちゅう。 「ちょ、ちょ、ちょっと〜! ///// 」 真っ赤になる私を見て、二人は大きく笑った。 「じゃ、いろいろありがとうございました!」 宗くん、お礼を言うのは私の方だよ。 「絶対に遊びに来てくださいよ〜!」 信くん… ん、絶対に遊びに来るよ。 ほっぺにちゅうして逃げ… 次に会ったら覚えてなさい。 体育館を出た所で、牧ちゃんが足を止めた。 「牧ちゃん、どうしたの?」 牧ちゃんは首を傾げた私を優しく抱き締めて、オデコにキスをした。 「ま、ままま… 牧ちゃんっ !? ///// 」 真っ赤になる私を見て、牧ちゃんは楽しそうに笑った。 「3年間、ご苦労だったな。」 牧ちゃん… 改まって何よ。 「大学では、マネージャーやるのか?」 考え中です。 「さえ良ければ、その…」 牧ちゃん… 頭なんか掻いちゃってどうしたの? 「俺の…専属マネージャーに、ならないか?」 ………。 「…は?」 思いっきり間抜けな声を出してしまった。 だって、専属マネージャーって、つまり… 「…嫌なら、今の話しは忘れてくれ。」 牧ちゃん… その笑顔反則。 3年前、クラスメイトだった私に、マネージャーにならないかと声をかけてくれた牧ちゃん。 3年間、私は誰よりも近くで、牧ちゃんを見て来たんだよ。 バスケをしている時の牧ちゃんが、一番かっこいい。 頼りになる牧ちゃんが、かなり… 好きだったかもしれない。 「…そうだね、考えてみるよ。」 バスケ部は私にいろんな物をくれた。 全国制覇を唱えた、夏の思い出。 可愛い後輩達。 そして、誰よりもかっこいい… 私の好きな人。 × × × × × × × × × × 牧ちゃん… 帝王ちゃん付け。(笑) 呼びたかったんです。 m(_ _)m 連載ドリームに登場していない人達、とりあえず、書いてみました。 信長… 可愛いぜ、ちくしょう☆ 海南卒業式でした。 |