3月3日。――― 3年間学んだこの学校を、私は卒業します。 卒業式 〜陵南〜 『やっぱり、サンが卒業しちゃうと寂しいかな。』 卒業式の少し前に、仙道がそんな事を言った。 「仙道君!」 聞き慣れた声に、仙道は目を開けた。 「サン、おはよ。」 寝惚け面で、一つ欠伸をする。 は頭を抱えた。 「おはよ、じゃなくて… 卒業式さぼったらダメでしょ、まったく…」 仙道は体を起こした。 「で、サンがココにいるって事は、卒業式はもう終わったんだ?」 のほほーんと言う仙道に、は溜息を吐いた。 「…越野君が、探してるわよ。 キャプテンなんでしょ、しっかりしなさい。」 仙道は相変わらず、のほほーんとしている。 「普通、こんな日にまで練習しないでしょ。」 仙道は続けた。 「天気もいいし、釣りにでも行こうかなあ。」 立ち上がって、屋上からの景色を一望する。 は常々思っていた疑問を口にした。 「ねぇ、仙道君はどうしていつも屋上にいるの?」 仙道は手摺りに寄り掛かりながら、一転を指さした。 「屋上だとね、アソコがよく見えるんですよ。」 仙道の指の先には、3年2組の教室。 「…サンってば、眠たそうに授業聞いてましたよね。」 小さく笑う仙道に、は顔を赤くした。 「い、いいじゃない。 こんな所でサボってる人に、言われたくないわよ。」 温かい日差し、優しい風が吹く。 「魚住さんは板前、池上さんは大学… サンも、大学………」 が首を傾げた。 「それがどうかしたの?」 仙道は首を振って、を見つめる。 「イヤ、俺のために花嫁修業するんじゃないかな〜って。」 は小さく吹き出した。 「また、そんな事言って…」 「大マジなんですけど。」 得意のポーカーフェイスで微笑む仙道。 は言葉を詰まらせた。 「俺ね、サンがいたから、陵南に決めたんですよ。」 仙道が続ける。 「丁度見学に行った日に、サンと会ったんですよ。 覚えてません?」 その日、仙道を体育館まで案内したのが、他ならぬだったのだ。 「スカウトされたと言っても、まだ中坊でしたし… 結構悩んでたんですけどね。 サン見たら、ココしかないって思ったんです。」 さらっと言われて、は焦った。 「…今、何を言おうか考えてるでしょう?」 仙道が笑った。 「本当に、サンはわかり易いなあ。」 「…ど〜せ、単純ですよ。」 はぷいっと顔を背けた。 風に髪を揺らしながら、仙道が呟く。 「一年だけですから、待ってて下さいね。」 は首を傾げた。 「俺が、サンと同じ大学に入るまで。」 仙道がにっこりと笑う。 「彼氏とか作ったら、泣きますよ?」 はあえて強がった。 「万年サボってる人が、大学なんていけると思ってるの?」 仙道は笑顔のまま続ける。 「大丈夫ですよ。 サンが受かったなら、俺も受かります。」 「…ど〜ゆ〜意味かしら?」 二人で顔を見合わせて笑った。 間もなく、屋上のドアが開いて、騒がしいのがやって来た。 「あ〜、仙道さんもさんも、こんな所におったんですか、探しましたわ〜。」 彦一は振り返って、続ける。 「越野さん、福田さん〜、二人ともここにいますよ〜!」 「仙道〜! お前ってヤツは〜!!」 越野は仙道を見るなり、跳び蹴りをかました。 「キャプテンの自覚あるのかよ! チョロチョロしてんじゃねえ!」 二人のこんな様子を見るのも、もう最後かも知れない。 そう思うと、ふいに寂しくなった。 「さん !? どないしたんですか?」 彦一が慌てた。 「え?」 は首を傾げた。 温かい物が、頬を伝って流れる。 「あ…」 無意識の内に涙が溢れた。 「…さん。」 始めてみるの涙、福田はそれ以上言えなかった。 仙道がを優しく抱き締めた。 「寂しくなっちゃいました?」 は震えた声で言う。 「…目にゴミが入ったの。」 仙道が笑った。 「ウソツキ。」 が体を捩る。 「…放してよ。」 「ヤです。」 仙道が即答した。 「俺以外のヤツに、サンの泣いた顔なんて見せたくありません。」 誰にも聞こえないように、耳元で呟いた。 「また、そんな事言って…」 は涙を拭って仙道を見上げた。 「…仙道に何かされたんですか?」 越野がそう言って仙道を睨んだ。 仙道はただ笑って、首を竦めた。 「あ〜、そや!」 彦一が思い出したように手を叩いた。 「監督達が待ってます〜、早いトコ行きましょう!」 5人は体育館に向かうため、屋上を後にした。 「サン。」 呼ばれては振り返った。 「っ………」 一瞬何が起こったのかわからず、目をパチクリする。 「俺、さっきの話本気ですから。」 仙道は何事もなかったように歩き出した。 「仙道になる覚悟、しておいて下さいね。」 いつもの調子ではにかんだ仙道に、呆気に取られて言葉が出ない。 はそっと唇に触れて、ゆでタコように真っ赤になった。 (ほんと、マイペース… いきなりキスなんかするかな〜。) 仙道か。――― とりあえず、考えておくよ。 もう二度と着る事のない制服の裾を翻して、は皆の後を追った。 × × × × × × × × × × はい、陵南高校卒業式です。 と言うか、仙道くんドリです。 陵南ファンの方々、すみません… m(_ _)m 福ちゃん、一言だけだし。(笑) 関西弁、何もわからないし。 無駄に長いし…。 つーか、仙道くん… 君のキャラがわからない。(汗) 大変失礼しました。(逃げ) C= C= \(;・_・)/ |