飲み会 〜湘北〜



「宮城君、歩ける?」

 の問いに宮城は大袈裟に答えた。

「頭割れそうですよ…」

 ゲンコツを喰らった個所を押さえる。

「でも、目は覚めたみたいね…」

 小さく溜息を吐いて、は宮城に肩を貸した。



「キャプテン、しっかりしなさいよ。」

 夜道を歩きながら、が苦笑う。

 足元が覚束ない。

「かなり飲んだんですよ、無茶言わないで下さい…」

 三井と飲み比べしていた事は事実。

 足に来ている。

「途中まででいいでしょう?」

 フラフラしながら、何とか歩いてが言った。

 宮城はゆっくりと口を利いた。

「あの、まだ… 言ってない事があるんですよ………」

 急に改まった宮城に首を傾げる。

「どうしたの?」

 宮城はゆっくりと、言葉を探した。

「その…ありがとうございます。」

 急にお礼を言われても、は首を傾げる事しか出来ない。

 宮城が続ける。

「大学の受験が控えているのに、最後まで部の方に顔を出してくれて…嬉しかったです。」

 は首を振った。

「大した事じゃないわよ。 受験より、皆が大切だったの。」

 にっこり笑って、が言う。

 宮城は真っ直ぐにを見据えた。

「まだ何かあるの?」

 小さく頷いて、呟くように言う。

「………卒業おめでとうございます。」

 宮城はを見据えたまま続けた。

「言えなかったんです、その…コレでお別れだって思いたくなくて、口に出したら本当になっちゃうから…」

「…ん。」

「…絶対、バスケ部に顔出して下さいね。 次は、必ず優勝しますから。…失礼します!」

 宮城はそれだけ言い残すと、を残して走り出した。

 小さくなる背中を見つめながら、は溜息を吐いた。

「…がんばれよ、キャプテン。」

 声は風に消された。



× × × × × × × × × ×



 リョータEDです。
 彼は繊細だと亜椎は思うんですよね。
 まだ日も経っていないのに、卒業と言う言葉が懐かしいのは何故?(笑)



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