飲み会 〜湘北〜



「桜木きゅんと、帰るの〜v」

 へらへら笑いながらそう言うに、その場にいた全員がショックを受けた。

「はっはっは〜! 流石サン! この天才をご指名とは、目が高い! さあ、行きましょう!」

 皆が呆気に取られている隙に、を連れ出す。

「じゃあ、ばいばい〜。」

 は笑顔で手を振って、桜木に連れられ帰って行った。



「う〜、ふらふらするぅ〜。」

 酔いが回っていて真っ直ぐ歩けない。

サン! 危ないですよ!」

 桜木が慌てて支えた。

 肩を貸すと言う形で。

「ん〜。」

 はとろんとした目で桜木を見上げた。

「花道、デカイね〜! きゃははっ☆」

 何が可笑しいのか、バカ笑いをしている。

サン、近所迷惑ですから…」

 桜木はを持て余していた。

 お世話になったマネージャー。

 無碍に扱う事は出来ないが、手におえそうにない。

サン、家どこですか?」

「いえ〜? ん、県内よぉ。」

 桜木の質問に、はすっとぼけた答えをする。

「………そおっすか。」

 桜木、哀れなり。

 一度だけ送った事があるのだが、はっきりとした場所を覚えていない。

(ココ左だっけ…?)

 立ち止まって悩んでいると、急にが口を利いた。

「花道ぃ〜…」

「な、何すか?」

 今度は何かと、溜息が漏れる。

 は相変わらずとろ〜んとした目で桜木を見つめた。

「…おかえりぃ〜。 リハビリ、よぉく頑張ったぢゃん〜?」

 にぃっこり微笑まれて、桜木は少したじろいだ。

「来年もぉ、がんばれよぉ〜。」

 リハビリから戻った時、一番喜んだのは他でもないだった。

 失った技術を、また一から叩き込んでくれたのもだった。

 遅くまで残ってやっていた自主錬に、時々顔を出してくれたりもした。

 数えればきりがないほど、世話になった。

 頭が上がらない。

さん…」

 まだ言っていない事がある。

 言いたくなかったのだ。

 言ってしまえば、もう会えなくなるから。

 まだ、一緒にいたいから。

「…卒業、おめでとうございます。」

 桜木はゆっくりとそう言った。

 しんみりした空気を破ったのは、またしてもの声だった。

「…花道ぃ。」

「は、はい…」

 感動して泣いてくれたのだろうか?

 そんな期待を少しして、桜木はを見つめた。

 しかし、人生そんなに甘くない。

「…は、吐くぅ………」

 泣き出しそうな目で見上げられて、そんな台詞を聞いて、桜木は焦った。

「ま、待ってください! もう少しで付きますから!!!」

 を抱き抱え、本能が感じるままに突っ走る。

「花道、揺らすなぁ! 気持ち悪っ…!」

 夜道にの声が高らかと響いた。



× × × × × × × × × ×



 主人公・桜木君ドリームです。
 ヒロイン泥酔…。 口調が変わっています。(笑)
 酔っ払っている方はいいですよね。
 だって、次の日には記憶にないんですもん。
 シラフには溜まった物じゃありません。
 酔っ払いの世話は、お断りしたいです。



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