「ねぇ、君!! マネージャーやらない?」
男子生徒が女子生徒を勧誘している。 新学期には珍しくないその光景は、私に二年前を思い出させる。 『あのっ!! バスケ部のマネージャーになりませんか!?』 愛和学院一年だった私に声をかけて来たのは、同じクラスの諸星大だった。 『…別になってもいいよ。』 断る理由もないので素直に頷くと、諸星は太陽のようにぱぁっと笑った。 −−− 「! 早く来いよ!」 当人に大声で呼ばれて、私は振り返った。 「今ね、二年前の事を思い出してたの。」 身長差のため、見上げる形でそう言った。 「二年前?」 首を傾げる諸星に、はにっこりと微笑んだ。 「マネジャーに勧誘されて、私の貴重な時間を割かれたなーって思ってたの♪」 「…本当に?」 親に怒られた小さな子供のように困っているその姿が、バスケをしている時とはまったくの別人で、どこかかわいく思えてしまった。 「冗談よ、行こう♪」 本気で悩んでしまった彼ににっこりと微笑んで、体育館へと促す。 今から私たちが所属するバスケ部の練習が始まる。 二年前からどれほど多くの時間をこの体育館で過ごしたかわからない。 マネージャーとして、(役に立っているかわからないけど)彼の側にいられる事がすごく嬉しいなんて不謹慎かなって思う。 でも、お互いに辛い時、一番近くにいたよね。 アナタは何も言わないけど、私も何も言わないけど。 無意識のうちに、視線がアナタを追っていた。 時々目が合って、照れ臭そうに笑ったりもした。 出会って三年目の春。 一緒にいられるのは、これで最後。 去年も、二年前も、愛和学院バスケ部はベスト4。 一緒に優勝を狙えう事が出来るのも、最後。 遅くまで残って練習しているアナタを放っておけなくて、一緒に残った日もあった。 私達が付き合っているって噂も、何度も流れた。 アナタは何も言わないけど、私も何も言わないけど。 隣を並んで歩くと、やっぱり女の子なんだなって思って恥ずかしくなる。 キミは何も言わないけど、俺も何も言わないけど。 風に揺れる長い髪、それを見てどれだけドキドキしたかわからない。 二年前、声をかけたのは偶然なんかじゃなくて。 キミに側にいて欲しかったからなんだ。 俺達が付き合っているって噂が流れた時、不謹慎ながら嬉しかった。 キミは何も言わないけど、俺も何も言わないけど。 −−− 「何黙ってんだよ?」 諸星が首を傾げる。 「…ちょっと、考え事してた。」 誤魔化すように笑って、が言った。 大きなスポーツバッグを片手に、更衣室のほうへ歩いて行く。 その後姿が好きで、はいつも眺めていた。 の視線が嬉しくて、諸星は少しゆっくり歩いていた。 最後の夏。 優勝と言う目標のため、練習にも身が入る。 諸星は何も言わないけど、も何も言わないけど。 言葉はなくても、互いに通じている事もある。 × × × × × × × × × × こんにちわ亜椎です。 密かに気になっている諸星くんドリーム。 物静かな感じを出したかったんですが、微妙ですね…。(苦笑) 何だ、スランプか?(いつもの事だろ。 by 三井) 徐々に全国区ドリームを増やして行きたいです。 |