「週番、誰だ−?」
「あ…ハイ!!」

隣の席のが慌てて黒板を消しに行った。
週番は座席順なので当然俺も週番だ。
面倒くさいとは思うがなんせは背が低い。
一限のヤツは黒板のホントに隅から隅まで使いやがる。
の背じゃ一番上の字を消すのはムリだろう。
二限の…確か、加藤とかいう男だったと思うが、コイツはハッキリ言ってヤなやつだ。
人が気にしてることを指摘して笑い飛ばす。
このまま一人にさせれば下品な笑いを浮かべて背のことに触れるに違いない。
しぶしぶ席を立ち上がり黒板の傍まで歩く。
俺に気づいたが一瞬ホッとした顔をする。
そしてそれを見計らったかのように加藤は俺を見て人を馬鹿にしきった顔をした。

「どうした、三井。どこへ行く」
「俺も週番なんで。黒板を消しに」
「そんなでかい黒板じゃない、一人で充分だろ。なぁ、

またはじまった、と教室は溜息同情の眼差しで溢れる。

「一応、仕事なんで」
「仕事?今まで一度だってそんなことをしたことがあったか?今更何が仕事だ、偉そうに」

確かに週番の仕事なんて初めてだ。
学校にもロクに通ってなかったし……
バスケ部に戻ったことで環境が変わった。
教師どもはまだ俺をヘンな目で見やがるけど生徒の方はそんなことない。
変わろうとする俺を、戻ろうとする俺を受け入れてくれた。
はその第一号。
バスケ部に戻ったからってすぐには馴染めなかった。
そんな時普通に接してくれたのがだった。
掃除当番をサボって帰ろうとした俺を思いっきり怒鳴りつけやがって…
他のやつらがいる前で、だぜ?
無性にハラがたって言い返して口論になって…
で、みんなに笑われた。
それから、誰も俺に怯えなくなった。
それどころか平気で俺の過去を笑ってくれるんだから…
まぁ、とにかくは俺にとって特別なわけで。
そんながみんなの前で色々言われるのは耐えられなかった。

「ったく、トロいんだよ、お前は。戻ってろ」

加藤を無視してを席に戻らせるとわざと煙を立てながら黒板を消してやった。
もちろん俺自身が被害にあわないように注意しながら。
加藤のヤツ思いっきり咳き込んで、それから目を抑えて廊下に飛び出していった。
チョークの粉でも入ったんだろう。
まったくいい気味だぜ。

「やるじゃん、三井」
「はは、まかせろ」
「さっすが元不良!怖いものナシって感じ?」
「え?現役だろー?三井」
「んだと?もう引退してるっつの」

クラスメイトと談笑しながら席に戻るとだけが不機嫌そうにしている。

「何怒ってるんだ?」

ヘンなやつだと思いながら席につく。

「あれくらい一人でできたもん。三井のおせっかい」
「あ?どう見たって届かなねぇだろうが」
「届いたってば!!そこまでチビじゃないんだからっっ」
「可愛くねぇなぁ…こう笑顔で“三井くん、アルガトウv”とか言えねーのかよ」

ムキになる姿がたまらなく可愛いのだけれど心と言葉は裏腹。
「どうせ可愛くないもん」と膨れる様子はとても同い年とは思えず。
思わず零した微笑には「何笑ってんの」と睨みつけてくる。

「いや、可愛いなーって…」
「は?何寝ぼけてんの?」

人がせっかく素直に言ってるのにこの態度…

「前言撤回、やっぱ可愛くねぇ」

今度はこっちが膨れる番。
全く人の気も知らないで…
は訝しげに首を傾げたりしてる。

「何すねてんの?三井」
「拗ねてねーよ、誰かさんみたいな子供じゃあるまいし」
「なっ…のどこが子供だって言うのよっっ」

そーいうとこだ、とは口に出さず代わりに少し黙ってみた。
は悔しそうに喚いてる。
クラスメイトに注目浴びてるのもお構いなし。
まぁ、一種の名物みたいになってるしな…今更だ。

「ちょっと、何黙ってんの!?」
「んー…お、加藤のヤツ戻ってきたぜ」
「三井!!」

まだ何か言いたそうにしていたが俺が前を向くと渋々黒板へと目を向けた。

「…

名前を呼ぶとはシャーペンをくるくる回しながらこっちを見る。
前向いてろ、と言い無理やり前を向かせ小さく息を吐く。

「俺さ…この時間結構好きなんだぜ」
「……加藤の授業?」
「ばっか、ちげーよ…お前と、こうやってる時間」
「三井…?」

やっぱり今日の三井はヘンだ、と少し赤くなりながら言うの髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
柄にもなくこっちまで照れてきてプイッとそっぽを向くと後頭部に痛いくらいの視線。

「…何とか言えよ」
「あ…うん」

うん、ってなんだ…どーいう意味だよ。
頬杖をついたままへと視線を戻すと混乱しているようだった。
俺もも何も言わずにただそうやってて。
何か言おうとしても言葉が出てこなくて…
ったく、情けねぇ…

「…お前は?」
「ふぇ?」
「だから…お前はどうなんだよ」

ぶっきらぼうに言うと一瞬の間を置いて唐突には笑い出した。

「何がおかしいっ!?」
「あっはははは、だって三井ってば…」

顔真っ赤だよ、と指摘されますます顔が熱くなるのを感じた。
うるせぇ、と毒づいて机に突っ伏す。
この授業はもう聞かない…と、いうより聞けない。
くすくすと笑うの声にムッとして突っ伏したまま顔だけに向ける。

「ねぇ…今日、部活終わるの待っててもいい?」

まるで俺がこうすることを知ってたかのようにが微笑む。

の為に頑張ってねv」
「何で俺様がお前ごときに…ガキはさっさと帰って寝てろ」
「何よー、いいじゃないの!!」
「っだー、うっせーー!!いいから帰れっ」
「イヤ!絶対帰らないからね」
「帰れ」
「帰らない」
「いいから帰れっ」
「イヤだって言ってるじゃないの!!」
「いいかげんにしろーーーっっ」

この後も不毛な言い争いは続いて授業は中断。
少しだけ素直になってみたつもりがまたいつもの繰り返し。
でも、とこうやって言い争ってる(?)時間は好きだから。
理想の恋人たちみたいな甘い会話はないけれど。
今はこれで…このままでいいんだと思う。
少しずつ…そう、素直になれるから。



「今に見てろ…」

体育館に通うようになったに一人呟いて。
変わらない時間を変えるべく俺は走り出した。














.comの亜椎深雪さまに相互リンク記念に送らせていただいたものです
クラスメイトで仲のいい友達…ほのぼの……
そういうリクエストだったのですが…仲良く見えるでしょうか
亜椎さん、相互リンクありがとうございましたv
そしてここまで読んでくださった皆様もありがとうございますv
感想などいただけると嬉しいですv



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 蔵月紅南様より、頂きました。
 みっちーです。
 素直になろうよ。
 まったく、その通りだ、みっちー。(笑)