彼氏に背を向けて、好きなアーティストが映る予定の画面を見つめる私。
一瞬でも見逃したくは無いから、視線はずっと画面に釘付け。
その後ろで、つまらなそうにソファーに寝転んでるのが彼氏の流川楓。
「……オイ」
楓が無愛想に呟くのはいつものこと。
振り向かなくってもどんな顔をしてるかなんて、解ってる。
いつも以上に不機嫌なカオで、表情よりも雄弁な目はきっとこう言ってる。
『俺だけを見てろ』
ついでに言うと、行動パターンだって判ってます。
いつもは無言でリモコンを取り上げて、そのままＴＶを消してしまう。
ふふん。でもね。
今日はその手には乗りません。
リモコンはしっかり私の服の中！……前、手で持ってたら力ずくで取られたからねぇ…。
…………さすがに服の中にまでは手を入れないだろう、うん（汗）
そんなことしたら、泣いてやるから。
とりあえず。
オイ、なんて声をかける辺りがいつもと違うじゃない。私、有利だわ。
やられてばかりじゃ無いんだから。
「……オイ、」
微妙な声の変化。……うう、ちょこっと拗ねてる…。
構ってあげようかとも思ったけれど、画面が切り替わった瞬間そうも言ってられなくなった。
「ああ～vv だぁぁ～vv」
大好きなが画面一杯に映ってる……。しか見えないわvv
が歌う歌はサイコーなんだってばvv
新曲のイントロが流れた瞬間、「ブチッ」という普段は聞かないような音と共に、画面が真っ黒になった。
「ええええええええええ？！ な、何で？！」
理由はすぐに判った。
コンセントからプラグを抜いたままの状態で、勝ち誇ったように楓がこっちを見ていたから。
てーか、何でそんなデカイ体してんのに、そんなに素早いわけよ？
いつの間にコンセントまで忍び寄ったの？……恐るべし、流川楓。
「ちょっと、楓！ 何すんのよ！」
「うるせー」
ポイと役目を果たさないプラグを投げ捨てて、こっちに近寄ってくる。
私はひるまないで言い返した。
「なによ、文句ある？ 楓だっていつも構ってくれないじゃない」
楓の部屋に遊びに行った時はいつも、洋楽のＣＤをかけながらバスケ雑誌を見て。
私が話し掛けたって、何をしたって、ちらりと視線を向けて「どあほう」の一言。
ただそれだけ。
なのに、何で私だけなのよ！
「ムカツク」
「はぁ？」
「歌手だろーがモデルだろーが」
「……はぁ？」
淡々と言葉を続ける楓。
「オメーがそんな目で俺以外を見てんのが、すげームカツク」
…………何ですと？
「俺だけを見てろ」
「……それって、独占欲？」
ぷい。
楓は横を向く。あくまでも答えないつもりらしい。
「ねーねー、どういうことなのよ。ちゃんと言ってよ。か～え～で～？」
うりゃうりゃと頬を突付いてみる。
ち、と小さく舌打ちした楓は、いきなり「がばっ」と私を押し倒した。
…………………………そりゃあもう自然に。
「∑！！ 何すんのよ！ このスケベ！」
さすがの私も、この常態で冷静ではいられないのです。
思いつく限りの悪口と、両手両足でジタバタじたばた…。
時折、ほんの少し楓が痛そうな顔をする。
ついに限界がきたのか、見下ろしてた状態から徐々に顔が近づいてきて……。
ちゅ。
「……イキナリ何すんのよ」
そのまま楓は耳元で囁く。
『好きな女が他の男見てたら、いい気しねーだろうが』
正直言って、苦笑したくなるくらいに馬鹿馬鹿しいと思うけど。
こんなにも楓が好きで、他の奴なんか見れないって言うのに。
拗ねたような楓の顔を見てたら、そんな誤解も許せてしまう。
ああ、やっぱり楓が好きなんだなぁvv
「俺だけを見てろ」
無愛想で生意気で、少しだけヒネクレた――とても珍しい、ストレートな主張。
判ってますよ。あなたしか見えてません。
だから、ね。
もう少しだけ、私にも構ってください。
あなたの目に映るのは私だけだって。自信を持って言わせてくださいよ？
「でさ、楓。いつまでこの状態なのよ。……重いんだけど」
「zzzzzzzzzz……。」
「寝てんなよ、オイ！（怒）」
●あとがき。
さて、これは何デショウ（汗）
ＢＢＳ１１１１ＨＩＴの亜椎深雪様より、「ヤキモチ流川」のリク。
もう、何も言いません。ハイ。
結構な別人具合で。ははは。
そのままイチャついててください。アタシは逃げます。では！
流川「…逃げやがったか……。ＢＢＳ１１１１ＨＩＴありがとな、深雪」
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坂上偲
様より、頂きました。
流川ドリームです。
アーティストにヤキモチ妬くなんて…
可愛いぞ、流川！！